おはようございます、山日和さん。
絶望的な週末の天気予報である。「大雨の恐れ」という文字があちこちで躍っている。
そんな中、ひと筋の光明を見出した。福井県嶺南地方だけが午前・午後とも降水確率20%。これに賭けてみるか。
ふ~さんと美浜のコンビニで待ち合わせる。頭上に広がる青空に、してやったりと顔を見合わせた。
晴れが約束されそうな場所をぴたりと見つけ出す才能ですね。
気象予報士の資格、十分というか。
本日の目的地は耳川左岸支流の門近(かどち)谷である。京都山の会のHPと瓜生氏の「嶺南の谷」以外にはまったく記録を見ない谷だ。
こういうのを見つけ出すのも蛇の道は蛇という感じ(笑)
巨大な鳥籠のような嶺南変電所の裏に車を止めた。目の前には下山予定の「屏風ヶ滝」コースの標識が立っている。
この時点では、確かに「下山予定の」でしたね。
結局、屏風ヶ滝は見損ねてしまいましたが、敢えて滝を見に行こうという言うエネルギーも枯れかけてましたからねぇ。
流れに沿った林道を行くが、3面張りの水路にチョロチョロと流れる水を見ると、この上流に食指の動く沢があるとはとても思えない。
あまりに水量が少なくて、びっくりでした。
1週間前は豪雨に悩まされた耳川水系は濁流に飲まれてました。
そこかしこの支流が茶色に濁って道脇からも吹き出してました。
道路も冠水し、重機で土砂の撤去作業の真っ最中でした。
それを思うと、あっという間に水が引いた印象です。
林道終点に檻のようにフェンスが張り巡らされていて一瞬たじろいだが、これは動物除けの柵である。扉を開けて中に入る(外に出る?)。
我々も害獣かもね。
しかし、それほど、動物による農作物被害が大きいんでしょう。
出発地点で標高150mしかないここは日陰でも暑い。流れに足を浸して足元だけでもクールダウンを図る。そのうち花崗岩のナメが現われ出して若干は気分も持ち直すが、基本的にはヤブ沢の様相である。
一生懸命で蜘蛛の巣を払う姿も立派でした!
退屈してあくびが出そうになった頃、変化は突然現われた。左へ90度屈曲した先にやっと登場したのが8m滝だ。右から斜上できそうだったが、上部に手が足りない。無理をせず左岸から巻き上がった。
あと一手!に泣く滝が多くて・・・
小滝をいくつか見送ると、門近谷最大の2段18m滝と対面する。下段の右のガリーから簡単に上がれるが、上段はまったく手が出ない。ここも左岸のブッシュと岩壁の際を上がって左へ折り返す。落ち口のラインはまだ上だ。ブッシュを束ねて強引に体を引き上げる。太い木がなく、頼りなげな潅木や草を束ねて掴む以外にないのだ。
なんとか安全地帯まで到達して連結したスリングをフィックス。ふ~さんを待つ。噂通り、高巻きも一筋縄でいかないようである。
これが、この谷を象徴してました。
あと一手に泣き、高巻こうにも突破口がなく、強引に登れば壁に張り付いたりきわどいトラバースになく・・・の連続(涙)
次の9m滝はようやく快適に直登できる滝だ。ふ~さんトップで右から取付いたところでビデオを回す。ところが最後で詰まって試行錯誤している。追いかけようとしたところで左から登り切った。
流芯にこだわりたかったのですが、逆層でした。
簡単に直登した後難関が立ちはだかった。5mばかりの滝だが垂直のスラブで取付くシマもない。左岸にルートを探るが簡単ではなかった。先ほど同様と言うより更に悪く、ブッシュ頼みでジワジワと高度を上げる。せまいテラス状のところまで上がるとやっとまともな木が現われてひと息付けた。下で待つふ~さんにロープを投げる。ふ~さんもふーふー言いながら追い着いて来た。
ここでルートミスを犯す。ふ~さんがそのままトップで岩場を上がって行ったが、よく見るとテラスのラインが落ち口方向に続いているようだ。上がり切ったふ~さんに声を掛けて呼び戻す。余計な労力を使わせてしまった。
立ち木にロープを掛けてトラバース。最後はやや立って来たので懸垂に切り替えてやっと流れに下り立った。
地形を見て慎重に判断を繰り返す場面が連続。
ラインの取り方をミスしましたが、一件落着でほっと一息。
神経をすり減らす巻きでした。
難関はまだまだ続く。これも垂直の5mスラブ滝。落ち口のあたりにチョックストンがあり、これに手が届けばなんとかなりそうだ。真ん中あたりを横に走る割れ目を伝って流芯の左から上部を窺うが手が届かない。あきらめて巻こうかと相談するが、到底巻き上がれるようなルートは見つからない。巻くとすればさっき下りて来たところを登り返すしかないだろう。考えた末、ふ~さんからショルダーで届かないかと提案があり、早速試してみた。
ふ~さんの立ち位置はまともに水流を浴びる場所だ。そこで肩に乗って目一杯手を伸ばしたが、体重を預けられる状態にはならない。仕切り直して2度目のトライ。今度はその石にスリングを投げて引っ掛けた。ちょっと引っ掛かりが浅い感じもするが、右手にスリング、左手にチョックストンという状態で一気に体を引き上げた。ザックを吊り上げて、ふ~さんもゴボウで引っ張り上げた。やれやれである。
水流シャワーを浴びていたのはどれほどでしょう。
山日和さんの体重を両肩で支えてヘルメットを滝壁に押しつけてひたすら堪え忍びましたね~。
水が耳の中にごぼごぼ入ってくるしなかなか苦行でしたよ。
これで魂もきれいになったはず。
しかし難関はこれで終わりではなかった。小滝を2つやりすごした後にまたもや通過不能の8mスラブ滝の登場だ。一見登れそうに見えた滝の右岸草付きだが、足を乗せるとズルズルと土が崩れ落ちて話にならない。もちろん腕力を使える潅木もなく断念。さて、次は左岸のルンゼを子細に眺める。大雨で表土と枯葉が流されたようで、手前にその堆積があり、ルンゼは磨かれた岩盤が露出していた。ここも上部の様子がわからないのと、引っ張れば抜け落ちる脆い岩質でリスクが高そうである。
またかっ!って感じでした。
通過不能、突破不能・・・という言葉が頭をよぎるほど。
門近谷、恐るべし。
ここからふ~さんと手分けして偵察を開始。少し戻ったところから右岸・左岸の弱点を探すも、どこを眺めてもズルズルの草付きばかり。それでも立ち木があれば何とかなるのだが。かなりの時間が経過して、やっと左岸に行けそうなラインが浮かび上がった。うまい具合にそこだけにあった細い潅木を掴んで体を一段持ち上げると立ち木が程良く繋がる斜面となった。ひたすら登って岩の露出する小尾根に出れば太い木も多くひと安心である。
30mばかり登ったところでトラバースラインを発見した。正直なところ、このまま尾根へ出てしまってもいいと思っていたが、踏み跡を辿って上流へ。しっかりしたところもあれば微妙な箇所もあるラインを進み、ふ~さんの「滝!!」という声で下方を見ればそこそこの滝が懸っていた。
登れなかった滝の落口を確認しながら高度を上げ、どこで下降ラインに入るか・・・
勝負のしどころが続きました。
再び小尾根を乗り越す地点から尾根伝いに下降して最後は上流側の草付き斜面を下りる。ここは比較的傾斜が緩く助かった。
何か久し振りに水流と再会したような気分である。これでやっとメシにありつける。8m滝の下から1時間が経過していた。
ここまでランチはお預けでした。
ちょうど滝の落ち口で、例によって落下地点の観察に行ってみると、これが京都山の会のレポにあったS字15mらしい。瓜生氏のガイドでは我々同様に巻いたのでこの滝は見ていない。意外なことに右岸にも踏み跡があり下流へ続いていたのが気になるところである。
左岸側の斜面に巨木が1本ぽつんと立っていた。トチかブナか。よく見てみると葉がどちらでもない。カエデだ。これほどのカエデの巨木にはあまりお目に掛かったことがない。紅葉すればさぞ素晴らしいことだろう。
「再訪する理由ができましたね。」と言うふ~さんに「もうええわ。」と返す。もうそんな気が起きないほど神経の消耗戦のような高巻きの連続を強いられる谷だったのだ。
カエデの巨木は立派でした。
紅葉の季節が楽しみでしょ?
いつ行くのかな?
上流は一転して穏やかな表情を見せ、「小便小僧滝」や水流に現われて巨大な根張りが露出したブナ等の見どころもあった。下山予定の屏風ヶ滝道が谷を横切ったようだがわかりにくい。最後は右へ振って登山道に乗り、青息吐息で雲谷山に到着。出発からなんと6時間半も経過していた。いろんな思いのこもったハイタッチを交わす。
湿地帯を通過し、赤テープも確認。
しかし、稜線へのルートはなかなか手強かったです。
それにしても、山頂まで6時間半。
長かったです。
ほんと、長かったです。
下山は屏風ヶ滝へ向かうつもりがあまりのいい登山道に釣られて門近谷の左岸尾根を進んでしまった。好展望地もあり、まあまあの林相だったので良しとしよう。但し下山後の車道歩きが追加されてしまったが。
反射板経由のよい道が新庄まで続いていて、下山路は安心出来ました。
対岸の庄部谷山方面は結構ガレ地が目立ちました。
先週の濁流の理由もよくわかりました。
大御影山も大きく展望できました。
幸運にも結局下山まで一滴の雨も降らなかったが空には黒い雲が広がり始めている。
温泉を目指して敦賀市内へ戻る頃には雷鳴を伴って激しい雨が降り始めた。
山日和
雨が降る前に、絶妙のタイミングで沢登りを終えました。
おもしろ恐い谷でしたね。
お疲れさまでした。
ふ~さん