【日時】2011年4月10日(日)
【山域】北ア
【天候】晴
【メンバー】ふ~さん、たんぽぽ
【コース】
アカンダナ駐車場 6:40---国道 7:15 --- 9:50 アカンダナ山 10:20 --- 白谷山南側鞍部 11:00
--- 12:00 白谷山 13:10 --- 白谷山北側鞍部 14:30 --- 大棚東端 16:10 --- 大棚西端 17:30--- 上地ヶ根 18:30
焼岳から南へ延びる稜線上に白谷山とアカンダナ山がある。
白谷山は大きな焼岳と妙ちくりんな名前のアカンダナ山に挟まれてその存在感は薄いが、自分にとっては魅力のあるピークだ。
かねてから狙っていたこの2座に今年こそは登ろうと決心し、絶好の好天が巡ってきた。
白谷山を狙うのなら焼岳の西に広がる大棚も歩いてみたいと思い、ルート計算をしてみるとかなりのロングコースになる。
冬の間にぐうたらしていた体にいきなりのロングコースは厳しい。
途中でくじけそうな気もするので力強いパートナーが欲しくなり、急遽ふ~さんに声をかけたところ快諾をもらえた。
鬼に金棒、たんぽぽにはふ~さんなのだ。
- 白谷山と笠ヶ岳
上地ヶ根のランディングポイントに車をデポし、スタートはアカンダナ駐車場とした。
雪が硬いのですぐにアイゼンを履き、赤布に導かれるように斜面を登っていくと、かつて安房峠越えに使われていたと思われる道に出た。
その道を辿りつつ国道に出ると、すぐに後続の単独行者が追いついた。
単独の方はここからアカンダナ山頂まで直登をするらしいが、我々は国道を進んで南側の谷から入ることにする。
ダケカンバに覆われた谷は明るくて気持ちがいい。
谷を進んでいくと真っ白な沢筋が山頂までダイレクトに続いているのが見える。
直登してしまいたいところだが、それを堪えて外輪山との間に広がる針葉樹林帯に入る。
カンジキならばボコボコとはまってしまう針葉樹林の中でスノーシューはいかんなく威力を発揮してくれる。
アカンダナ山頂では軽くエネルギ補給を済ませ、まだ先は長いのですぐに出発となった。
直登してきた単独行者も白谷山を目指すか迷っていたが、山頂付近の雪陵を見て諦めたようだ。
我々はそのピークを越えて更に大棚まで行くのだ、さて上地ヶ根まで本当に歩き通せるだろうか。
白谷源頭のガレ地を覗き込むようにして外輪山を西側から巻き、白谷山直下のコルに出ると穏やかな雪原が広がった。
周囲は南に鬱蒼とした針葉樹林、北は無木立の斜面と対照的な眺めだ。
もうここでランチタイムにしたい気分だが鬼監督に向かってそんなことは言えない、ここはじっと我慢で斜面に取り付くとする。
スノーシューの食い付きが思いのほかによくて、ぐいぐいと高度を稼げるのが嬉しい。
さっき休んでいたアカンダナ山頂はもうすでに眼下の眺めだ、穂高や霞沢も見渡せる。
- 白谷山東面と焼岳
目前に迫ってきた山頂に胸を膨らませて登っていると、ふ~さんが「猛禽だあ!」と叫んだ。
彼には山ガ以外にもすばやく見つける能力があるらしい。
見上げれば白谷山の上空をタカが舞っている。
幅広の翼、まるでやっこ凧のように舞う姿はクマタカに違いない。
我らの登頂をクマタカが歓迎してくれてるようで嬉しくなる。
山頂直下で緊張感のある斜面となり、スノーシューにストックという出で立ちでは、滑った場合のことを考えると恐すぎる。
しかし、もうわずかなので一気に登りきってしまうと、純白の笠ヶ岳や北ア中部の峰々が目に飛び込んできた。
やった~、白谷山山頂だ!
まだ先の長いロングコースでもたんぽぽ山行のランチタイムに手抜きはない。
今日はつき合ってくれたふ~さんへのお礼を込めてラムチョップが用意してある。
だが、これには事件があった。
早朝、車の中で食事をしていると窓の外で黒い影が動いた。
あっ、しまった!車の外にはラムチョップが冷やしてあるのだ。
白いレジ袋に入ったラムチョップはトレイ側から穴を開けられ、4本のラムチョップのうち1本がない。
もう1本もつつかれたようなので・・・仕方がない、バカヤローカラスにくれてやるわ!
こうしてカラスの残り物のラムチョップを頂戴することとなった、トホホ。
まあ、ニュージーランドの仔羊ちゃんも白谷山のてっぺんで食われれば本望かもしれない。
白谷山北稜は通過が厳しいとの情報を持っていたが、山頂から見下ろしたところ問題はなさそうなので大棚を目指して進むことにする。
雪庇の崩落は激しくて迫力のある光景が次々と現れ、何度もクレバスを越えていくと急斜面が現れた。
アイピケ装束に替えたいところだが、面倒なのでこのまま下ることにする。
雪面にスノーシューでステップを切っていくのが太腿にメチャこたえ、翌日の筋肉痛が思いやられる。
下りきって一安心、振り返えるとそのステップは天国への階段を彷彿とさせるような美しさで見とれてしてまった。
- 天国への階段
コルまで下りきるのに1時間20分と思いの外に時間を費やしてしまい、これから下る大棚までの標高差300mは更に大変なことになった。
急斜面をトラバースしながら大棚へ下るつもりでいたが、斜面が急すぎてトラバースができない、どこまでもズルズルと下ってしまう。
急斜面の連続に我慢できなくなくなったふ~さんがスノーシューを脱いでツボ足になった、するとどんどん進んでいくではないか。
たんぽぽも遅れまいとツボ足に切り替えて後を追う、腐った雪と格闘すること1時間40分で大棚まで下りきることができた。
安らぎの空間として二人を出迎えてくれた大棚は、広葉樹が多くて想像していたよりもずっと明るい森だった。
真っ直ぐに伸びた背高ダケカンバが森の多くを占め、焼岳の噴気孔から発するジェットのような轟音が響き渡っている。
疲れて鉛のように重くなった足を引きずりながら標高を落としていくとダケカンバはやがてブナへと姿を替えていく。
大棚の西端から名残を惜しむように振り返ると残照に浮かぶ焼岳が我らを見送ってくれた。
その姿を瞼に焼きつけ、長かった雪遊びに別れを告げれば一気に下って上地ヶ根だ。
もうそこにはふ~さんの車が待っていてくれる。
- 大棚から望む焼岳