山日和さんこんばんは。
佐目子谷橋の付近ではなにやら大掛かりな工事が行われていた。時間が早いのでまだ人影はない。わずかに残された駐車ス
ペースに車を止める。
今日は13年振りの佐目子谷。イブネ・クラシ・銚子のトライアングルの真ん中の熊ノ戸平(西尾本ではイブネを指すと書かれている)
から銚子ヶ口、黒尾山へ長駆縦走してここへ戻ってくるというプランだ。
最後の下山ルートがポイントだが、伊勢幹線の送電線が走っているので巡視路が必ずあるだろうという読みである。
宮指路さんがカクレグラに行ったときに、佐目子谷をぐるっと周回なんて面白そうと地形図を眺めましたが、黒尾山からの下りは難しそうなので黒尾山をスタートにする方がいいかなと、登れそうなルートを見ててこの橋の袂からP616に上がればよさそうと思っておりました。
崩落した岩塊を過ぎると左からハチノス谷が合流する。この入口の狭い谷の少し奥に姫ヶ滝がある。ザックを降ろして滝見物に向
かった。50mばかり進んだところで急激に左折した谷の頭上遥かから姫ヶ滝は落ちていた。繊細にして優美。鈴鹿でもトップクラス
の美しい滝だろう。
綺麗なたきですね、滝下にもいけるのでしょうか?
本流に戻って遡行を続ける。この谷の特徴は「平凡」と「長い」のふた言で言い表すことができる。谷筋は時折小さな落差やナメが
見られるものの、感心するぐらい何ごとも起こらない。沢屋ならあくびが出てしまいそうな谷だが、佐目峠へ抜ける道として捉えれば
歩き甲斐のあるルートだと言える。
ここはzippさんがイブネオフの時に登ったルートかな?、かなり苦労してたのかなと思いましたが、長靴程度でも浸水せずに辿ることができますか?
出発してしばらくはどんよりとした空模様だったが、予報通り日が差してきた。ほんの少し前まで夏の暑さが続いていたのがウソ
のように涼しい。あっという間に日差しが恋しい季節に移り変わってしまったようだ。
クチクマ谷はさすがに傾斜が強く、本流よりは沢登りらしい。小滝をいくつかこなして行けば忽ち源流の装いとなった。
急激な変化でしたね、何着て行ったらいいのか迷います。
何度も訪れているイブネ・クラシ・銚子のど真ん中にこんな桃源郷があるとはずっと知らなかった。
今でこそ自由に歩けるが、昔は背丈を遥かに越すササ薮の中、微かな踏み跡を追ってルートを外さないように必死でここへ下りる
なんて考えもしなかったのである。
エ~山日和さんここ初めてでしたか?その事の方が驚きですが
この辺りも過去は笹原だったのですか?
適当なところで引き返して入口のブナ林に戻った。ここはランチ場としては申し分のないロケーションだ。谷間でありながら周りの山
との標高差がほとんどないので底抜けに明るい。
良い所ですね、オフ会の候補場所になりましたか?
靴を履き替えて5分も登れば銚子の山頂だ。谷を挟んでイブネとクラシのダイナミックな高原状の台地が目の前に広がる。かつて
イブネ劇場と名付けられた通りのワイドな眺めを見るのも久し振りだ。
やだまだ余裕ですね、かなり遅い目の時間だと思いますけど。
ここも10年以上前、須谷川からの下山路として一度使った尾根であるが、その時の記憶は疎林のプロムナードがあったことだけ
だ。黒尾山までハイペースで距離を稼ごうと目論んでいたが、やがて記憶にない岩場と崩壊寸前のやせ尾根が行く手を阻んだ。
そう言えば鈴鹿屈指のバリ尾根だと思ったような気もする。
結構厳しい所がありそうですね。
気持ち良く到着した黒尾山は、下から見上げる雄姿とは違って、半分植林の魅力のない山頂だ。
前回は北東尾根から腰越谷へ下りたので、ここから先は未知のルートである。なんとか闇下を回避できる時間だろう。
ここまでは予定通りでしたか。
。確実性を選ぶなら多少遠回りでも大滝神社へ下りるという選択肢はあった。それを選べないのが悲しいところ。ふたつ続いた
岩場を過ぎるとまずまずの道に変わってホッとする。
ヤブコギのサガみたいなもんでしょうか?、綺麗な周回をめざしてました?
最大のポイントは送電線が尾根とクロスするところである。ひとつ目の鉄塔を過ぎ、ふたつ目の鉄塔の手前に見慣れた巡視路の
標識があり、左を指し示していた。「よしっ」ひとりで小さくガッツポーズ。これでもらったも同然だ。(と、その時は確信していた。)
ここまで来れば距離も標高差も微々たるものだ。勇躍左への道へ踏み出した。やがて尾根のど真ん中にシカ除けネットが現れた。
巡視路としてあまりいい道とは言えない。それでも標識は確実に下山できることを示唆している。
順視路が有ると安心ですよね。
次の鉄塔に着いた。ところが進行方向には次の鉄塔を示す標識がない。とにかくこのまま進めば大丈夫だろうと気に留めずに下
りて行くと、見えるはずのない国道とその脇の工事現場が目に飛び込んできた。いつの間にか佐目子谷橋の袂へ落ちる尾根を下
っていたのだ。
もう国道まで50mほどの標高差しかない。なんとかなるだろうと立ち木を頼りに急傾斜の尾根を辿ると目の前に現れたのは・・・・
絶望的なコンクリートのガケとネットフェンス。尾根の末端は橋の際のダム湖に落ち込んで下を窺うことすらできない。国道まで10m
の場所だが、どう考えても出られそうもないトラップに捕まってしまった。あたりにはまだ工事の人影があちこちにあり、エンジン音も
響いている。
左の急斜面を下りてダム湖畔に立つ。対岸が駐車地だ。水はなく、泥田のような地面が続いていた。少し近付いたが、くるぶしまで
沈むような泥で覆われている。既に完全に日は暮れた。巡視路があるはずの東側へは完全なガケで遮られて進みようがない。
ありゃりゃ、やっちゃいましたね。この尾根上がれないのですか?上がれないから巡視路は手前の鉄塔から下って来る行き止まりルートになってるのかな?
それとも工事でつぶされたのでしょうか、もしかして崩落?。湖面まで降りても道にあがれないんだ
腹をくくって登り返すことを決意した。ヘッドランプを付けて4つん這い状態で下りてきた急斜面を戻る。
勇気ある決断というか、この場合それしかないかな明るいうちならなんとかなるかもしれないけど。
悪いことに足が攣りかけてきた。早速秘薬を飲もうとするが、水分がほとんどない。残り少ないお茶をひと口含んで流し込む。
口の中が乾いてカラカラになり気持ちが悪い。ザックからBCCAのアメを取り出して、唾液の強制分泌を計った。ほどよい酸味が唾液
を誘って作戦成功だ。
アドレナリンが出まくっているせいかさほど疲れは感じない。350mの標高差を登り切って、萱尾への尾根が分岐するP616mに辿り
着いた。これで帰れる。
こうなると焦りますよね、闇下歩き豊富な山日和さんだからそんなことないか
日ごろから夜の山も歩いておくのもいいですね。
最後はコンクリートの階段を下りて萱尾の集落へ。ヘッドライトを光らせてトボトボと歩く人の姿を見て、対向車のドライバーはさぞ驚
いたことだろう。
遭難者かと思ったことでしょう
通報されずによかった~
佐目子谷橋を渡って車に戻った時には工事の人影もなく、あたりはひっそりと静まり返っていた。
宮指路さんは待ってくれてなかったのですね
ロングコースお疲れ様でした。参考になりました。=TW=