遅くなりましたが、出張先の博多にて学会の合間に内職をしながらようやくレコアップです。まずは復路のみのrepのアップをご容赦下さい。
【 日 付 】2019年5月26日(日曜日)
【 山 域 】鈴鹿
【メンバー】グーさん、OKUさん、山猫、家内、次男
【 天 候 】晴れ
【 ルート 】オフ会々場14:33~15:01根の平峠~15:05ブナ清水分岐15:08~15:31ブナ清水15:36~16:45朝明駐車場
オフ会の会場に残っているのはいつの間にかグーさんと我々の他には山日和さん、satoさんとお話されているOKUさんのみ。ほぼ終了間際に到着することになってしまったオフ会ではあるが、気がつくと到着してから1時間半ほどの時間が経過している。時間が経過の早いことに今更ながらに驚く。
オフ会からの復路はグーさんに同行させて頂く予定である。家内が京都に帰ってから用意しなければならない食事の時間を気にして、当初はキノコ岩を経由してブナ清水に向かう予定であったのが、根の平峠からブナ清水に向かうコースに変更してくださる。さて、オフ会の帰路はグーさんの後をついていく・・・かなり気楽である。
オフ会会場を後に北に向かうと、終盤の石楠花の花が湿地の畔で我々を見送ってくれる。今年は鈴鹿の石楠花ははずれ年との話ではあるが、この時期に見かけるということは相当に花期も遅かったのだろう。一輪でも石楠花をみかけると嬉しいものだ。湿地の右手の緩斜面を登ると根の平峠に向かう明瞭な登山道が見つかる。
広いタケ谷を沢に沿って緩やかに登ってゆく。オゾ谷でも多くのヤマツツジを見かけたが、新緑を背景に咲く朱色の花は目に鮮やかだ。ふとグーさんが残念そうに仰る「OKUさん、来ないな~」。登山道を振り返るが、人が登ってくる気配はない。山日和さんとsatoさんとの話に花が咲いているのだろう。
谷の右奥で白い花を纏った樹にそこだけ光があたって、眩いほどに輝いている。
「グーさん、あそこの白い花の樹に寄り道していいですか」
「ええで~、そうしよう」
近づいてみると実によく見かける白い花ではあるにもかかわらず、すぐには名前が出てこない。後になってようやく花の名がわかったとき、この花の名が思い出せなかったとはと軽い衝撃をうける。なんということはないヤブデマリであった。
我々が満開の白い花を愛でているうちに、後ろの林の中から忽然とOKUさんが出現する。先程のグーさんの声が聞こえたのだろうか。「よくここにいるのがわかりましたね」と言いかけたが、すぐさま言葉を引っ込めることにした。
「グーさんの声なら1km離れていてもわかりますよね」
すかさずOKUさんも満面の笑みで頷き返される。
根の平峠が近づくにつれ、谷の源頭部はなだらかな斜面が広がるようになる。林の間かはところどころに広がる草地がり、絵画のような優美な風景を提供してくれる。朝明から鈴鹿主脈に至るのに最もポピュラーなルートではあるが、やはり魅力的なところである。登山道に戻り、根の平峠に到着すると、小さい子供を連れた数家族のグループが休憩しておられる。鈴鹿の上高地で、ほら貝の音に惹かれてやってきたグループだ。
グーさん「ここは通過することにして、休憩はもう少し先に行ってからにしよう」
グーさんが休憩ポイントに選んだのは朝明に下るルートからブナ清水へと登るルートに入ったあたりだった。グーさんがリュックからおもむろにタッパーを取り出し、ぶどうを差し入れして下さる。次男はことのほかぶどうを気に入ったようだ。
いよいよブナ清水に向かって、花崗岩の間を流れる急流に沿って登ってゆく。この沢を遡行するとしたら容易ではないと思うが、かなり踏み込まれた明瞭な踏み跡が続いている。昔からあった登山路のようにも思えるほどだが、柳川洞吹さんのコメントのお蔭でここに道がついた経緯を知る。山日和さんが「今や鈴鹿の上高地と共に一大観光地になってしまった」と嘆息する訳だ。
登りがきつくなるにつれ家内が遅れることを心配したが、前半の山行とは異なり、全く遅れることなくついてくる。やはりグーさんと一緒だと緊張感が違うのだろう。そのことを指摘すると、グーさん「何、儂の足音がうるさ過ぎるってか?」
「いえいえ、そういう問題ではありません」
登るにつれて、山毛欅の樹が目立つ。やがて谷がなだらかに広がり、山毛欅の広々とした林の中を清流が緩やかに流れるようになる。ここは誰しもが歩みを緩め、心ゆくまでこの透明な緑の空気を呼吸することを願う場所であろう。午後の木漏れ陽が山毛欅の樹肌や林床に落とす柔らかな光がいつしか黄金色を帯びている。谷間からそよぐ涼しい風と西陽か運ぶ熱気が混じりあう。
先程まで辿ってきた水の流れがどこへ行ったのだろうか、細い水の流れを目で追うと、落葉の谷間に抱かれるよう横たわる巨岩の下から勢いよく迸り出る水流が目に入る。グーさんの声が森閑とした山毛欅の林に響き渡る。
「ブナ清水は冷たいけど、味はないな~」
「そりゃ水だから、味はありませんよ」
伊勢山上では水は賞味しなかったが、味があるのだろうか。
ブナ清水からは朝明に向かって真っ直ぐに下る尾根を下山ルートに選択する。どうやら山日和さん、satoさんが登りに通ったのがまさにこのカクレ谷左岸尾根であったことを後で知る。
最初はなだらかな二重尾根であり、その尾根の間には小さな池がある。踏み跡を追って尾根の間を進むが、すぐに踏み跡は不明瞭となる。どうやら下に続く尾根筋は左端の尾根から続いていることに気がつくが、OKUさんもすぐに気が付かれたようだ。わずかに斜面をトラバースして尾根芯を捉えると、丁度そこは樹林の切れ目でもあり目の前には広々とした伊勢谷とその向こうに聳える釈迦岳の展望が大きく広がる。左手の山中で一際、目を惹く白い小さな三角錐は朝に登った羽鳥峰だ。
尾根はかなりのヤセ尾根の急下降が続くが、尾根上には明瞭な踏み跡がついている。岩場が数箇所に出現するが、岩場の度に好展望が広がり、急下降の緊張感を癒してくれる。
OKUさん「この尾根はところどころにこういう展望があっていいですね~」
家内と次男が遅れることを懸念したが、遅れることなくついてくる。やはりグーさんがいると違うのだろう。尾根の上部では低木が多く、随所に展望が開けていたが、下るにつれて樫の樹林となり、眺望がなくなる。尾根芯を少しでも外れると斜面には樫の滑りやすい落葉が敷き詰められている。二度ほど尾根芯の藪を避けて斜面の踏み跡を辿ってしまったが、家内と次男が落葉の上で足を滑らせる。この尾根はヤセ尾根の尾根芯を外さないのがポイントであろう。
延々と続くように思われた急下降も朝明渓谷の遊歩道と合流すると、途端に道も広く、なだらかになる。間もなく遊歩道は左手の斜面を降りてゆく。遊歩道を辿り舗装路を下るという選択もあったが、先に見える小ピークの向こう側では樹林が切れている。展望を期待して、ピークへと登り返す。ピークの近くに達すると登山路はその南斜面を巻いて先に行くようだが、ここは敢えてピークを訪れるべき。
次男と家内はピークを巻いた先で休憩しているので、「先に行っていていいよ」と声をかけるが、すかさず、グーさんが「先に行かんと、待っといて~」と言葉を継ぐ。
ピークのから眺望は期待以上のものがあった。わずかに西側に降りると辿ってきた尾根が一望のもとである。
グーさん「下りモードで登り返すのは厭やけど、ここはええな~」
登山路に戻ると、既に家内と次男の姿はない。なだらかな尾根道を先に進むと林道に出るが、まだ、次男と家内の姿は見えない。私がGPSでルートを確認しているのを見たOKUさんは、林道をショートカットをする法を探していたことがすぐに理解して下さったようだ。
OKUさんはすかさず「この3人であれば林道をショートカットするのに躊躇はないですよね」と涼しい顔に笑顔を浮かべておられる。
御意である。選択の余地はないだろう。
滑りやすい樫の落葉が積もった斜面をショートカットして、下の林道に降りると、丁度、先を行く家内と次男が林道の向こうから歩いてくるところに合流した。舗装路に出るとすぐに朝明の駐車場に帰り着く。駐車場には我々の3台の車と見覚えのある白い車の他にはわずか数台の車しか残っていない。
朝明を後に平野に出て鈴鹿の主脈を振り返ると、収穫期を迎えつつある小麦畑が傾いてゆく西陽を浴びて小麦色に輝いていた。オフ会の会場に大きく遅参した反省は残るが、グーさんとOKUさんのお陰で楽しい復路となった。ブナ清水にご案内頂いたグーさん、同行して下さったOKUさんに感謝である。