立春過ぎて暦通り東風(はるかぜ)が吹いた。まさに東風解凍。
今年の千秋は雪が少ない。スノーシューの出番は無いかな。
どうにも『ご神木(マザーツリー)』に会いたくなる。
そいえば2月にあんなところ行ったことないな。多分初じゃね。
待っててねマザーツリー。
♪ほうぅら春先国見にぃ見いぃに見いぃに見に来てね♪
【日付】2019年2月7日(木)
【山域】台高(千秋)
【メンバー】あめちゃん(単独)
【天候】高曇り(風生温かし)
【ルート】菅谷駐車場(8:30)~万歳橋(9:10)~奥山谷出合(9:30)~ご神木(12:30~13:30)~万歳橋(16:00)~駐車場(16:30)
朝からソワソワするような生温かい風が吹いている。雲は西から流れてるけど、風向きがなんか違うなぁ、東南だ・・・。
いつもの駐車場に車を止めて出発。路肩にもほとんど雪は無い。まあ、3工場(万歳橋)から入っても大丈夫だろう。4工場、服部さんの碑があるところ、この辺からところどころに雪が。
- 服部さんの碑。帰りは雪はありませんでした
あと20mでワサビ谷なんだけど、ここがいやらしかった。幅30㎝の木馬道に雪が被さり右は断崖で20m下に沢。雪に足を蹴りこんだらその雪の塊がそのまま右下にずれた。『ウッ!』。雪が腐っていて浮いていたのだ。何とか足裏に岩が引っ掛かり踏ん張れて事なきを。『この道はこの季節は気をつけないと…』
5工場(奥山谷の出会い)の渡渉も普段より水量2割増し。
ここからは最短距離でご神木を目指すことに、で尾根にとりつく。とにかく風が温かい。上着を脱ぎTシャツ1枚になる・・・これでちょうどいいくらいだった。1100mを超えると雪が目立つようになるが、ブナの周りは早春のそれのように丸く地面が見え始めている。
- ♫ゆき~が溶けて、かわ~になぁって流れてゆきます♪
やがて一面の銀世界に。風景が時計を巻き戻しているみたいで、キャンディーズの歌が頭の中を駆け巡る。
- おっ、雪虫かな?セッケイ(雪渓)カワゲラだと思うけど
何とかご神木へのダイレクト尾根に到着。ここからは雪が無い季節でも岩塊の間に立木がある、両手を使いながら四つ足で登るところだ。この最後の詰めが厳しかった。いわゆる雪が腐った状態。踏み込んだ足がそのまま沈み込み、全然上に登れない。蹴り上げた足が膝くらいまで沈みそのまま下にある岩に靴底がつく。岩の表面が水平ならそこで止まりいいのだけど、下向きだと滑って元の場所に戻ってきてオシマイ。その場でたたらを踏んでるみたいだ。少し登ったところで頭の高さに木の根っこがあったので両手で掴まり足を踏ん張ったら両足とも滑った。なんのことは無い、両手を上に伸ばし体をピンと伸ばした状態で腐った雪の上に寝てる感じ。足の裏は腐った雪をいたずらにバタバタ蹴るだけ。城本クリニックのモデルみたい。さすがにTシャツ一枚の体にはこたえる。気がついたら音もなく周りは白いガスガスの世界。『ウ~ン、ダメかもしれんなぁ・・・』弱気の虫が騒ぎ出すが、三歩進んで二歩下がる、ドンマイドンマイ。あまりの難行苦行に、ひょっとして登りすぎたかもとキョロキョロするも見当つかず。若干傾斜が緩み、両足だけで立てるくらいになったら、唐突にご神木が前にいた。
80m程度登るのにで30分近くかかった。
- 唐突に現れました
『こんにちはぁ』
『おお、あめちゃん、今日はひとりか?』
- ノートは何とか埋まらずに
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『大体いつもそうでしょう。実は・・・』
『なんだそんなことか。どうだい、今日だってここに来るまで谷もあれば山もあったろう。けど最後はここに来れた。そんなもんだよ。Don`t worry baby』
『そうだな』
『Feel much better?』
『I'm OK. I'm alright』
『OK baby。さっ、ジロニィが火を起こして待ってるぞ。早く帰りなさい。今日は谷筋は危ないから、道子道はやめて、来た道を帰りなさい。ケド、あの服部さんのところは気をつけるように』
『よく知ってるな』
『こちとらご神木だぞ・・・・あめちゃん、 The show must go onだけどAnyway Doing alright』
(なんかご神木今日は横文字多いなぁ、Queenの映画の影響かなぁ?)
いつのまにかガスも飛んで、水無山、千秋、ボンサイダイラ、手に取るように見えている。
- 水無山もクッキリ
下りはチェーンアイゼンを装着。なるべく雪を拾いながら降りていく。チェーンアイゼンは思ったより岩の上でも制動が効く。渡渉で岩飛びのところがあるけれど、滑ることは無かった。ワサビ谷越えてくだんの場所。残雪慎重に超えて服部さんの碑にアイサツ。行きに有った周りの残雪は消えていた。チェーンアイゼンをはずしここからは左に谷を見下ろす歩きなれた形のいい木馬道だ。どうでもいいこと考えながらニヤニヤ歩いていたら左足(谷側)が浮き石を踏んだ。そのまま左斜面に体が落ちていく。滑落だ。止めなきゃ。うつぶせになって両手、腹側を地面にこすりつける・・・。砂利まじりの場所だったので3mほど落ちて止まった、代償にドロだらけ、カッパは敗れる。油断大敵。
- 左上から滑り落ちました
青田ではジロニィが薪を焚いて鍋が。ノブちゃんも差し入れを持ってきてくれて、昼飯を抜いた体にジンとこたえた。ただ、ご神木に行ったこと伝えると『アホやな』とヒトコト。
翌朝、オジヤン(ご神木の立て札製作者)に報告。
『あの服部さんのところは、つかむものが無いから気をつけないと。ただこの時期によう行ってきたな』
『俺も2月のご神木は初制覇だと思ったら、●●が2月に来たとノートに書いてました。剱岳に初めて登ったと思ったら、そこに錫杖があったみたいな感じですよ』
『ほほう、ホントに好きなんやなぁ、●●は』
と心から楽しそうにニコニコしてました。
オジヤンの笑顔を見たら、ご神木に会いに行ってご神木の話がオジヤンに できて、ホントによかったなと感じたのでした。
あめちゃん