ひょんなことから田村義彦さん(大台ケ原の自然を守る会)と知り合った。前鬼の宿から近鉄の駅まで車に乗せていただき、短い間だけど大台ケ原のことを中心にイロイロ貴重なお話を伺った。その際、大台ケ原で歩けるところを探してます、というと、大台ケ原から尾鷲までが楽しいよ、と教えていただいた。それ以来、機会を伺いはや15年。遠ざかっていた大台ケ原を再訪、実行することにした。大台ケ原山系集中山行<その①>です(その②は「シュークリームさんたちと行った桃源郷」)
【日付】2018年10月12日(金)・・・お許しください
【山域】台高(大台ケ原山系)
【メンバー】あめちゃん(単独)
【天候】曇りのち晴れ(強風)
【ルート】大台ケ原駐車場(7:00)~尾鷲辻(7:45)~白サコ(8:30)~マブシ嶺(10:00)~又口辻(12:20)~古和谷渡渉(13:45)~廃林道終点(14:30)~国道(16:00)~尾鷲駅(17:00)
名古屋からは大台ケ原行きのバスに乗るためには始発では間に合わない。前夜、仕事を終えて大和八木の安宿に泊まる。風呂は共同で入り口に札(「使用中」)をつるすタイプ、ナカナカだ。翌日もプチ電車旅、大和上市へ。雨がパラパラ降る中、バス停へ並ぶ、一番乗りだ。まあ、明日は晴れる予定。しばらくしてバス入線。並んでいたのは私だけ、バスが来てから、いわゆる山ガール二組、1人と3人組が乗り込んできた。この天気の中大台ケ原へ?山人気おそるべし。バスはいま大台ケ原ドライブウェイをひた走る。雨足はドンドン強くなり、道は川のようになっている。一日一往復のバスの運転手さん、目を閉じても運転できそうなほどの熟練だ。話しかけたかったけど、仕事中なので・・・。
やがて終点へ。
急ぐ旅でもなくユックリ降りようと山ガールに先を譲る
山ガール『あの~ビジターセンターはどちらでしょう?』
運転手『あっちの方だけど・・・困ったねえゼンゼン見えんねぇ』
そう、雨に加え霧が。白の世界だ。
あめ『あのぉ~、「心・湯治館」は?』
運転手『ホントは正面なんだけど、全く見えんねぇ』
傘をさしてトボトボと歩き出す。
- 幻想的な、すべてのやる気をなくす風景
出発は明日なので今日はゆっくり散歩、ひさしぶりに松浦武四郎のお墓にアイサツくらい、のつもりだったけど、駐車場を離れる気が失せた。休憩所(昔前泊の時よくお世話になりました)、ビジターセンターなどをプラプラし、宿が早めのチェックインをしてくれて、部屋でふて寝。夕食にイノシシの焼き肉が出てきてうれしかった。
翌朝、窓を開けると雨はホントの霧雨くらいながらも昨日のような霧の風景が広がっている。
『ああ、どうしよう・・・このまままたバスで帰るのか、それとも・・・』
尾鷲までの行程は約10時間。7時には出発しないと・・・。
「ええい、ままよ」ダメならバスに合わせて戻ってこよう、出発。
視界20mの霧の登山道、熊鈴を忘れたことを後悔しながら歩く。キホン、大台ケ原は約100年前に皆伐された地域。歩いている道も当時の作業道やトロッコのレールの跡だ。やがてシオカラ谷へ。ずいぶん昔、東の川を遡ってゴールしたら上につり橋があってビックリしたっけ、それ以来だ。尾鷲辻(ナカナカいい名前)から尾鷲道のスタート。ホボホボ尾鷲まで下りが続く。少し行きガスもはれてきた、振り返るとさっきまでいた大台ケ原のテーブルマウンテンのところだけがガスがかかっていた・・・出発して正解だった。
- 日本のギアナ高地。カッコイイ
白サコまで来ると森林軌道の跡も気になりソワソワするが出発時刻も遅かったこともあり、それはまた今度、先を急ぐ。左にも谷が出てくるが、これは銚子川の源流。道は尾根を辿るように続くが、この道は尾鷲から大台ケ原の大台協会への参詣道でもあり、林業関係者の作業道でもあるイニシエの道だ。また、最近尾鷲の有志が整備していることもあり、基本的に迷うことは無い。昔の空気を感じながらフラフラ歩く。
- 木馬道ですらこんなにリッパ(だいぶ下のほうです)
今回は一日でぬけてしまうが、途中で寝ると精神的ゆとりもできてフラフラ度が増して面白いだろうなぁ、キット。索道の中継点とか名前の紛らわしいマブシ嶺とか(田村さんの記事が詳しいです)昔の仕事現場とかを訪ねながら高度を下げていく。右下にはああ懐かしい、東の川が。
- ゴールはあの辺?とにかく海まで行けば
一部山腹で崩壊しているところもあるが、しっかりワイヤーが張ってある。
- 一番大きい崩落。ガイドワイヤーがあります
途中で尾根線を辿る龍辻山への分岐がある、が、とにかく風が強い。台風かと思うくらい周りの木がギュワギュワうなりながら揺れている。晴れているのに寒くてカッパが脱げない。 今回はあきらめて道を忠実に。
やがて神明水というところに(水は殆どありませんでした)。上の方でガチャガチャと岩が転がる音が。『ン?』見上げるとイノシシ。ウリボウ数頭と母イノシシ。『かわいいねぇ』と見ていたら、母イノシシが低音で『ガルルルゥ』。距離はあるものの、初めて聞いたイノシシの唸り声、ビビる。『イヤイヤ勘弁して、たしかにきのう食べたけどさぁ』
次々と変わる風景を楽しみながら又口辻へ。辻というからには交差点なんだろうが、右への道はほとんど見えない、とにかくの強風、昼メシにすこしでも風の無いところと思ってそちらに入るものの、藪がひどくて撤退、少し降りたところで昼メシに。
- 標識は懇切丁寧
次の分岐を右(古和谷)へ折れ途中から強烈に高度を下げると、川の気配が、古和谷だ。山賊小屋なるものの残骸があるが、もとは営林所小屋かなにからしい。谷を渡ると、右岸には石垣が。上部森林軌道の跡だ。一部崩壊が厳しいところがあるものの、やがてインクラインの跡へ。基礎知識なしに見ると、日本の林の中に忽然と現れた古代遺跡と思うだろうなあ。ゆっくり見たいが時間がない・・。横を添うように下ると下部森林軌道跡が迎えてくれる。レールもしっかり残っている、りっぱな森林軌道跡だ。
今回の旅は、レールの跡を歩くことで始まり、レールの跡を歩くことで終わるんだなぁ。イニシエの人の情熱を感じながら歩きます。じきトラックへの積み替え基地、簡単に言うと廃林道の終点着。
もうここからは散歩気分で歩く、するとまた目の前をウリボウが横切って草むらへ。『かわいいねぇ』とそこを通り過ぎると、すぐ後ろの近くの草むらから『ガルルルゥ』母イノシシの唸り声だ。さすがに全身の血の気が引く。『頼む、来ないで!』静かに歩を進める、ホッ。
やがて国道へ。ここから尾鷲まで一本道だけど、どっちだろう?まあ、なんとか正しいほうを見つけ進む。国道に降りても相変わらずの貸し切りの道だ。なぜか海に出るまで峠を越えなければいけない。当初はここも昔の峠道を越えてやろうかとも思ったけど、もう気力もない、ちいさなトンネルを使うことに。
- 新しい(2代目)トンネルだけどアジがあります
トンネルに入ると、後方から車の気配が、それも何台もの。『出たよ出た出た、マーフィーの法則が!』対抗できないのくらいの暗いトンネル。じっとして車を避ける。するとダンプまでやってきた。横のコンクリの段に飛び乗って岩むき出しの壁に体を擦り付けて避ける、ブルブル。なんか気分はダイハード。壁につけた腕が妙にネチャッとした。外に出て見ると、見たこともないくらい真っ黒な泥がベッタリ。出口にあった工事現場の簡易水道で洗うもナカナカ取れない、乾くと白くなるし・・・今回一番の嫌な思い出になった。
やがて見慣れた火力発電の煙突が。踏切を渡ると尾鷲駅が迎えてくれた。列車が来るまで行きつけ(2回目ですが)の料理屋で魚料理を堪能する。
- さあ、祝杯だ、アワワだ
「山」と「海」を結ぶイニシエの道、ぜいたくなひと時でした。
・・・・また行くかい?・・・・
・・・・そうだなぁ宿題も残ったし・・・・
・・・・逆コース?
・・・・
・・・・・・・・・・・・・
あめちゃん
ひょんなことから田村義彦さん(大台ケ原の自然を守る会)と知り合った。前鬼の宿から近鉄の駅まで車に乗せていただき、短い間だけど大台ケ原のことを中心にイロイロ貴重なお話を伺った。その際、大台ケ原で歩けるところを探してます、というと、大台ケ原から尾鷲までが楽しいよ、と教えていただいた。それ以来、機会を伺いはや15年。遠ざかっていた大台ケ原を再訪、実行することにした。大台ケ原山系集中山行<その①>です(その②は「シュークリームさんたちと行った桃源郷」)
【日付】2018年10月12日(金)・・・お許しください
【山域】台高(大台ケ原山系)
【メンバー】あめちゃん(単独)
【天候】曇りのち晴れ(強風)
【ルート】大台ケ原駐車場(7:00)~尾鷲辻(7:45)~白サコ(8:30)~マブシ嶺(10:00)~又口辻(12:20)~古和谷渡渉(13:45)~廃林道終点(14:30)~国道(16:00)~尾鷲駅(17:00)
名古屋からは大台ケ原行きのバスに乗るためには始発では間に合わない。前夜、仕事を終えて大和八木の安宿に泊まる。風呂は共同で入り口に札(「使用中」)をつるすタイプ、ナカナカだ。翌日もプチ電車旅、大和上市へ。雨がパラパラ降る中、バス停へ並ぶ、一番乗りだ。まあ、明日は晴れる予定。しばらくしてバス入線。並んでいたのは私だけ、バスが来てから、いわゆる山ガール二組、1人と3人組が乗り込んできた。この天気の中大台ケ原へ?山人気おそるべし。バスはいま大台ケ原ドライブウェイをひた走る。雨足はドンドン強くなり、道は川のようになっている。一日一往復のバスの運転手さん、目を閉じても運転できそうなほどの熟練だ。話しかけたかったけど、仕事中なので・・・。
やがて終点へ。
急ぐ旅でもなくユックリ降りようと山ガールに先を譲る
山ガール『あの~ビジターセンターはどちらでしょう?』
運転手『あっちの方だけど・・・困ったねえゼンゼン見えんねぇ』
そう、雨に加え霧が。白の世界だ。
あめ『あのぉ~、「心・湯治館」は?』
運転手『ホントは正面なんだけど、全く見えんねぇ』
傘をさしてトボトボと歩き出す。
[attachment=7]休憩所から.jpg[/attachment]
出発は明日なので今日はゆっくり散歩、ひさしぶりに松浦武四郎のお墓にアイサツくらい、のつもりだったけど、駐車場を離れる気が失せた。休憩所(昔前泊の時よくお世話になりました)、ビジターセンターなどをプラプラし、宿が早めのチェックインをしてくれて、部屋でふて寝。夕食にイノシシの焼き肉が出てきてうれしかった。
翌朝、窓を開けると雨はホントの霧雨くらいながらも昨日のような霧の風景が広がっている。
『ああ、どうしよう・・・このまままたバスで帰るのか、それとも・・・』
尾鷲までの行程は約10時間。7時には出発しないと・・・。
「ええい、ままよ」ダメならバスに合わせて戻ってこよう、出発。
視界20mの霧の登山道、熊鈴を忘れたことを後悔しながら歩く。キホン、大台ケ原は約100年前に皆伐された地域。歩いている道も当時の作業道やトロッコのレールの跡だ。やがてシオカラ谷へ。ずいぶん昔、東の川を遡ってゴールしたら上につり橋があってビックリしたっけ、それ以来だ。尾鷲辻(ナカナカいい名前)から尾鷲道のスタート。ホボホボ尾鷲まで下りが続く。少し行きガスもはれてきた、振り返るとさっきまでいた大台ケ原のテーブルマウンテンのところだけがガスがかかっていた・・・出発して正解だった。
[attachment=6]テーブルマウンテン.jpg[/attachment]
白サコまで来ると森林軌道の跡も気になりソワソワするが出発時刻も遅かったこともあり、それはまた今度、先を急ぐ。左にも谷が出てくるが、これは銚子川の源流。道は尾根を辿るように続くが、この道は尾鷲から大台ケ原の大台協会への参詣道でもあり、林業関係者の作業道でもあるイニシエの道だ。また、最近尾鷲の有志が整備していることもあり、基本的に迷うことは無い。昔の空気を感じながらフラフラ歩く。
[attachment=1]木馬道.jpg[/attachment]
今回は一日でぬけてしまうが、途中で寝ると精神的ゆとりもできてフラフラ度が増して面白いだろうなぁ、キット。索道の中継点とか名前の紛らわしいマブシ嶺とか(田村さんの記事が詳しいです)昔の仕事現場とかを訪ねながら高度を下げていく。右下にはああ懐かしい、東の川が。
[attachment=5]マブシ嶺から.jpg[/attachment]
一部山腹で崩壊しているところもあるが、しっかりワイヤーが張ってある。
[attachment=4]崩落.jpg[/attachment]
途中で尾根線を辿る龍辻山への分岐がある、が、とにかく風が強い。台風かと思うくらい周りの木がギュワギュワうなりながら揺れている。晴れているのに寒くてカッパが脱げない。 今回はあきらめて道を忠実に。
やがて神明水というところに(水は殆どありませんでした)。上の方でガチャガチャと岩が転がる音が。『ン?』見上げるとイノシシ。ウリボウ数頭と母イノシシ。『かわいいねぇ』と見ていたら、母イノシシが低音で『ガルルルゥ』。距離はあるものの、初めて聞いたイノシシの唸り声、ビビる。『イヤイヤ勘弁して、たしかにきのう食べたけどさぁ』
次々と変わる風景を楽しみながら又口辻へ。辻というからには交差点なんだろうが、右への道はほとんど見えない、とにかくの強風、昼メシにすこしでも風の無いところと思ってそちらに入るものの、藪がひどくて撤退、少し降りたところで昼メシに。
[attachment=0]標識.jpg[/attachment]
次の分岐を右(古和谷)へ折れ途中から強烈に高度を下げると、川の気配が、古和谷だ。山賊小屋なるものの残骸があるが、もとは営林所小屋かなにからしい。谷を渡ると、右岸には石垣が。上部森林軌道の跡だ。一部崩壊が厳しいところがあるものの、やがてインクラインの跡へ。基礎知識なしに見ると、日本の林の中に忽然と現れた古代遺跡と思うだろうなあ。ゆっくり見たいが時間がない・・。横を添うように下ると下部森林軌道跡が迎えてくれる。レールもしっかり残っている、りっぱな森林軌道跡だ。
今回の旅は、レールの跡を歩くことで始まり、レールの跡を歩くことで終わるんだなぁ。イニシエの人の情熱を感じながら歩きます。じきトラックへの積み替え基地、簡単に言うと廃林道の終点着。
もうここからは散歩気分で歩く、するとまた目の前をウリボウが横切って草むらへ。『かわいいねぇ』とそこを通り過ぎると、すぐ後ろの近くの草むらから『ガルルルゥ』母イノシシの唸り声だ。さすがに全身の血の気が引く。『頼む、来ないで!』静かに歩を進める、ホッ。
やがて国道へ。ここから尾鷲まで一本道だけど、どっちだろう?まあ、なんとか正しいほうを見つけ進む。国道に降りても相変わらずの貸し切りの道だ。なぜか海に出るまで峠を越えなければいけない。当初はここも昔の峠道を越えてやろうかとも思ったけど、もう気力もない、ちいさなトンネルを使うことに。
[attachment=3]トンネル.jpg[/attachment]
トンネルに入ると、後方から車の気配が、それも何台もの。『出たよ出た出た、マーフィーの法則が!』対抗できないのくらいの暗いトンネル。じっとして車を避ける。するとダンプまでやってきた。横のコンクリの段に飛び乗って岩むき出しの壁に体を擦り付けて避ける、ブルブル。なんか気分はダイハード。壁につけた腕が妙にネチャッとした。外に出て見ると、見たこともないくらい真っ黒な泥がベッタリ。出口にあった工事現場の簡易水道で洗うもナカナカ取れない、乾くと白くなるし・・・今回一番の嫌な思い出になった。
やがて見慣れた火力発電の煙突が。踏切を渡ると尾鷲駅が迎えてくれた。列車が来るまで行きつけ(2回目ですが)の料理屋で魚料理を堪能する。
[attachment=2]ゴール.jpg[/attachment]
「山」と「海」を結ぶイニシエの道、ぜいたくなひと時でした。
・・・・また行くかい?・・・・
・・・・そうだなぁ宿題も残ったし・・・・
・・・・逆コース? :mrgreen: ・・・・
・・・・・・・・・・・・・
あめちゃん