もともとは山日和さんの『飛越の山3題』をパクって『湖北の山3題』だったんです。それがアップする機会を失って、お蔵入り。
ところが、たんぽぽさんとSHIGEKIさんのやり取りを見てたら、急にこのレポを思い出してしまいました。
酷暑の折、寒いレポートを発掘してしまいました。
みなさん、暑い日が続きます。ご自愛のほどを。
【湖 北】 日ノ出山(1046m)・長尾(1040m)・新穂谷山(1040m)・新穂山(1067m)・鳥越山(1074m)・小朝ノ頭(1010m)
【日 時】 4月3日(日)
【地 図】
http://watchizu.gsi.go.jp/watchizu.aspx ... &l=1362224
【同行者】 単独
【天 候】 曇り~晴れ
【ルート】 P(5:30)~品又峠(6:21/44)~長尾(瀬戸山)(8:12)~新穂峠(8:43/9:02)~新穂谷山(9:34/43)~新穂山(10:45/11:16)~鳥越山(栗ヶ谷)(13:42/14:03)~鳥越峠(14:51)~小朝ノ頭(15:12)~連状口(15:38)~追分(16:26)~高山キャンプ場(17:18)
- 残雪の山
<品又山・日ノ出山(品又峠)>
奥伊吹スキー場は今日が最終営業日。恐る恐るゲートに近づくと「本日駐車料金無料」と大書してある。こいつはラッキーじゃないか!1000円も得しちゃったぜっ。小遣いの減額に泣き崩れていた私にとっては、まさに朗報。山行の成功を予感するスタートとなった。
ゲートも開いてる。第1駐車場まで車を乗り入れれば、アプローチも大幅に短縮である。第4Pのトイレの明かりで着々と山の準備を進める。
薄暮の中、ゲレンデマップでコースを再確認。近道を選んでチャンピオンコースに突入する。モーグルがアイスバーン化している。アイゼンが必要だが、取り出すのも面倒なのでザングツ歩きに終始。
やばいやばい。最大斜度33度というから、いきなり今回の山行の核心部か!?「どうして一歩一歩なんだろう」と涙した上村愛子ならひょいひょいの滑降斜面だろうが、私は何をやらかしても退歩するばかりの日々。
ツルツルやらかしながら氷化した急斜面と格闘する私は、浅田真央と上村愛子を凌ごうかと言うウィンタースポーツのトップアスリート気分であった。第5リフトトップに生きて立ち、金糞岳の勇姿を拝む。
寒風の吹く老朽化した品又山展望台。展望は一級品だ。御岳・乗鞍岳・槍穂の北アルプス・小津権現山・貝月山・琵琶湖の勇姿に早くもちびりそうになる。
<長尾(瀬戸山)>
これから辿る県境稜線を望んで、心中きりっと引き締まる。蛇行しながら脈々と連なる国境線。これを鳥越峠を越えて遥か小朝ノ頭までつなごう。長丁場なので、心身の調子のみならず、天候や残雪具合にすがる部分も大きいと予想された。
横暴な林道が国境稜線を横切る。ヤブが覗いている。林道が切り刻む山肌。しかし、美しい二次林が優勢で救われる。思わずにんまり。
我が恋人、立派なブナ嬢も私を待ちわびていた。でも、鼻の下を長くなんてしてられない。先は長い長い。気を引き締め直す。振り返ると品又山展望台が目線の下に沈んだ。背後に控えしブンゲンの山塊。
まずは長尾(瀬戸山)の山頂を踏む。丸裸の梢に鳥の巣を見て歩く。植林尾根に迷ってロスタイムに焦る。正面に新穂谷山が見えれば元気百倍。一旦、標高を落として新穂峠に立った。諸家(もろか)への道型が深く刻まれている。この歴史の古道が現役だったのはいつのことか。
<新穂谷山(新穂)>
- 新穂谷山
大岩を見て新穂谷山を目指せば熊棚がそこかしこ。あたり一帯は熊の巣窟だね。雪が緩んで大変になってきた。気合いを入れて登り返すと鹿が逃げていく。
新穂谷山には透明な山名プレートが架かっていた。ひと息ついて眺望をほしいままにする。圧巻の大展望。蕎麦粒山が五蛇池山へと一旦標高を落としていく。それが黒津山とアラクラへと盛り返している。さらに白山と能郷白山を背景に天狗山へと連綿と続いていく。後方に控えし小津権現山と花房山も無視できない名脇役だ。
<新穂山・アリカミノ岳(大ヶ屋)>
- 新穂山
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新穂山までは楽しい歩きだが、いくつものピークを忠実になぞる必要がある。1010ピークを始め、端麗なピークが踊るように居並ぶ素敵な残雪街道。長大なコースだが、その分、山にどっぷり浸れる。
新穂山(大ヶ屋)に立つ高い樹上に木札のプレート。四囲を見渡すと恵那山も浮かんでいる。蕎麦粒山の前衛の湧谷山が慎ましやかに視野に入った。
<鳥越山(栗ヶ谷)>
ここから国境線を反時計回りに回り込んでいく。ちょいと植林くさくなるのが難点だ。予想外にルート読みを迫られる。間違い尾根を修正しながら確かな足取りで歩く。北の展望が開けると上谷山・三周ヶ岳・高丸・烏帽子山を始めとする奥美濃の真打ち登場だ。
新穂山西の屈曲点で直角に南進するドラマチックなシーン。残念ながら植林気味でぼそっとしている。ここが例の不思議尾根だ。東が滋賀県、西が岐阜県。この摩訶不思議は近江側で中津又谷の浸食力が勝っていたからだし、同時に、金糞岳北部の美濃側で浅又川や八草川の浸食力が勝っていたからだろう。
金糞岳が大きいものの、鳥越山までが遠い遠い。計算したコースタイムよりも遅れ気味。ため息が出そうになる。めげずに雪庇を越えていこう。
いつしか快哉を叫びたいような青空が広がってくる。東を見やれば新穂山から1010ピークを経て新穂谷山のスカイラインが伸びやかだ。笑みがこぼれる。
しかし、雪の緩んだ足元は容赦なく負荷を与えてくれる。主のいない鳥の巣が頭上にある。小朝ノ頭が行く手の奥の奥に見えてくるが、まだまだ遠いなぁ。それでもブナの尾根登りに心が浮き立つ。そして、明るい栗ヶ谷(鳥越山)に立った。
- 鳥越山/栗ヶ谷
- 鳥越山/栗ヶ谷.JPG (21.92 KiB) 閲覧された回数 5038 回
<小朝ノ頭>
あとひと息。最初の鞍部に駆け下ってすぐ登り返しだ。ピークを踏んだ新穂山と栗ヶ谷山が視界に入って意気が上がる。東俣谷と中津又谷を隔てる長大な尾根を分けて、すぐに鳥越峠に降り立った。林道を辿りたい気持ちを抑えて小朝ノ頭を目指す。ここからが我慢一番だ。
小朝ノ頭に到達。いよいよ金糞岳が大きい。ここで本日唯一の足跡に合流した。下山の足跡なので、恐らく花房尾からの周遊と思われた。雪の緩みにたまらず途中でわかんを履いた様子。私も二週間前に辿った道を忠実に辿っていく。マンサクの薄黄の花に近い春を予感する。
追分直前になって先行の方がわかんを脱いだ様子。私もほっとひと息でフキノトウを摘んだ。
あ、林道にシャーペンが落ちている。先行者の方のものでしょう。山でご愛用のシャーペンなんだろうな。ひょっとして、まだ高山キャンプ場で装備を解いているかもしれない。急げや急げ。果たして届け物は間に合うか。
長い林道歩きで無事キャンプ場にゴール!しかし、残念ながら先行の方の姿は既になかった。
ふと思うところがあった。登山届けBoxをのぞいてみる。えーっと、この届けは下山時刻16時45分の方か・・・おぉっ、これだこれ。先行者の登山届けに違いない。よっしゃ、郵送で送り届けてあげよう。たかだかシャーペンと言うなかれ。彼にとっては歴戦の山行を共にした大事な連れ合いかもしれない。
- 小朝ノ頭
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さてさて、読者の皆さんの関心は、これから私がどうやって奥伊吹スキー場まで戻るかでしょう。こんな怪しい人物のヒッチハイクを許してくれる奇特な方など、よもや期待できまい・・・ということで、私はこの日、美濃俣丸~笹ヶ峰を歩くBiwa爺に拾ってもらうお願いをしていた。
Biwa爺からのメールが入る。まだ敦賀ICらしい。よっしゃ、それなら少し腹ごしらえでもするか。ザックの中からぺちゃんこの板状になったパン(元パン?)を取り出す。
さぁ、歩き始めるとするか。そのうち、Biwa爺が迎えに来てくれるだろう。のんびり歩いて高山の集落で草野川を渡る頃、爺が到着。誠にありがたい。爺には足向けて寝られない。よもやま話に花を咲かせながら奥伊吹スキー場へとご丁寧に送り届けて頂く。暗闇の駐車場に佇む、最後の一台が私の車だった。
爺が指さす方向を見ると満天の星。めくるめく天体ショーが、今まさに始まろうとしている。
あ、そうそう。シャーぺンの持ち主、一体どなただったと思いますか?
ふ~さん