鈴鹿 国見岳
2018.01.28(SUN) 曇りのち雪 同行 H君
鳥井戸ゲート=裏道=国見峠=国見岳=天狗・ゆるぎ岩=P1006=藤内小屋
ほぼ一年間、まともな山行はしていない。尾根の花見であったり、家族ハイキングであったり、あるいは山釣り、山菜やキノコ採り、この前は山腹へランチだけしに行った。そういう半端な事さえ月イチ程度である。どうしてこうなったのか自分でも分からないが、この体たらくだからやぶこぎネットもご無沙汰である。
このままでは二度と山頂を踏めないのではないかという危機感を抱き、久々に挑戦することにした。ところが自宅周辺で30cm弱の降雪があり、成功の確率メーターは一気に下がる。RAV4も処分してしまったし、この雪では何処へ行っても登山口まで林道歩きが避けられず、おまけにマイナーな山でラッセルなどしていたら中腹までも行けない。そうだ、御在所へ行こう(^^)/
超人気の山だからラッセルなど不要。中道登山口の大駐車場なら旅館街からクルマで行けるが、この降雪のあとでは2駆では不安だ。鳥井戸のゲートからにしよう。1km強の国道歩きとなるが除雪してあるし、錆びた足の慣らしに丁度良いだろう。
ゲート前に着くともう10台以上駐車され、殆ど県外ナンバーである。思ったより雪が少なく、自宅付近と変わらない。寒さもさほどでもなく、トンネルまでに体がホカホカになった。話題の湯の山大橋は取り付け部分が繋がっていないが、本体はほぼ完成していた。歩いて渡るのが楽しみだ。
藤内小屋までにホカホカを通り越して汗が出てきた。小屋の前のベンチで休息しながら一枚脱ぐ。ネックウォーマも外す。移動性高気圧通過中で風がないせいだろう。体は重いが何とか歩ける。H君同行のときは炊事の水を持ってもらえるので、多少背中が軽くなる。藤内沢分岐でヘルメット姿の人たちが用意をしていた。我々ハイカーは素通りでもよいのだが、ザックの肥やしにするのも癪なのでアイゼンを装着。私は昔、裏道でアイゼン履いて登ってくる人たちを過剰装備だろうと笑っていた。今思うと当時は何と傲慢だったのだろう。傲岸不遜、唯我独尊、(新垣)唯は独身、祇園芸者のあえぐ声、諸行無常の響きあり。衰えたからには何にでもすがるのだ。例え1cmのスリップでも5000歩歩けば50mの差が出る。それに裏道だって高巻きになったから危ないのだ。
- 凍てつく藤内壁
- 菰野町は真っ白
峠が近づいてくるころ眼下の谷に何人か屯していた。前尾根に通じるルンゼの氷瀑に人影を認める。へえ、アイスクライミングも渋滞か。以前藤内沢で出会った人は鋸岩の順番どりのためにロープウェイで登って、逆コースを下りてたと言っていた。南国三重では乏しい氷の争奪戦も大変だ。国見峠へ着くと暖かさともおさらばで、冬山らしい厳しい空気が肌を刺す。懐かしい雪の匂いがした。南、御在所岳方面はトレースガチガチ。北、国見方面トレース約一名・・・国見にするか。H君が国見尾根未踏だそうだし、少し体力残っているし。深雪に突入する。スノーシュー1名様だが、ないよりは大分いい。付近は樹氷の森。生きてまたこの目で樹氷を見られるとは感無量。途中でワカンと思われるトレースが出てきた。何処から現れたんだ?
- 樹氷の森
山頂付近に達するとデカいザックを背負ったワカンの2名様がウロウロ。若いご夫婦かと思ったら山ガール二人連れだった。私を見て
「つかぬことを伺いますが、尋ねてもよろしいですか?」
あかんとも言えず、「かまいませんが」と答える。それにしても変な聞き方だ。しかも「つかぬ事」なんて時代掛かった物言いである。
「国見岳はどこでしょう?」
念のためにGPSを見て答える「もうすぐそこ、ちょっと向うですね」
75Lのザックを背負っていたので「何処まで?」と聞くと藤原だという。
・・・この娘たちはバカなのか、それとも私をからかっているのか。
オーバーパンツの上からでもケツから太腿の張りが顕著で、歩き込んでいるのは推定できる。しかし誰も歩いてない深雪の稜線を、テント持っていても藤原まで行けるもんかい。しかもワカンの利く雪質ではない。まあ、何処を目指そうが、わしの知ったことではないが。
風裏のランチ場を求めて彷徨う。適当なところで雪を均して座り込んだ。新雪と低温で全然固まらない。それにしても寒すぎる。裏道は暖かかったが、行動を停止すると寒さが堪える。昼食を食べ終わったころ声がするので上の方を見たら、さっきの娘たちが引き返してきた。お嬢さんがた、もう藤原まで行ってきたんかい。
ランチ場から国見尾根への道まで適当にトラバースするが、潜る潜る。短い距離だからいいが、長かったら弁慶の立ち往生姿で遺体発見となろう。尾根へ向かう登山道はよく見るとごく浅い溝になっていた。何時のものか不明だが、今日は誰も通過していないようだ。急降下だがサラサラの雪なので尻セードはできない。やがて眼下に天狗岩の頭部が見えてきた。
- 寒いわ怖いわ
天狗岩の基部。中段の手掛かりがなく攀じ登るのは多少難儀である。上に上がるとやはりここは絶景だ。天狗様は不動ヶ谷上空の膨大な空間に向かって何を訴えているのだろう。「キングコング: 髑髏島の巨神」を思い出す。一番上まで登るにはさすがに足がすくむので無理だ。ここで写真を撮っているうちに雪が降りだした。大した量ではないが寒いので溶けず、ザックの上などすぐ白くなる。揺るぎ岩は登るのをパスして下山を急ぐ。P1004手前の鞍部に到達。ここから岳不動に向かって長距離の尻セードが楽しめるのだが、この雪質では無理。しかも集中豪雨以来通行止めの表示になっている。行けないことはないだろうが、大人しく従って1004から藤内小屋へのルートをとる。人の通過痕である浅い溝はこのルートを現れたり消えたりしている。ここも深いところは股から腰ぐらいあるが、下りであるし雪が軽いのでさほどの苦労はない。童心に返って楽しみながら下山。常緑樹が増え、刺すような空気が和らいでくると藤内小屋は間もなくだ。
ハリマオ