- 七々頭ヶ岳
能登の寒村に生まれ、小さい時から貧乏な暮らししか知らないせいか未だに貧乏根性が抜けない。高い高速道路代とガソリン代を払って福井まで来て、日帰りで帰る気にならないのである。せめて元は取って行こうということで、スノー衆の翌日にも近くの山に登ってから帰ることにした。
七々頭ヶ岳(ななづがたけ)693m。特別なアトラクションがなければ無雪期に登降意欲を掻き立てられる山ではないだろう。しかし、雪をかぶるとすべて3割り増し。スノー衆の翌日の帰りがけの駄賃にサクッと登ってサクッと降りてくるにはちょうど手頃な雪山かもしれない。
【 日 付 】2017年1月29日(日)
【 山 域 】湖北
【メンバー】単独
【 天 候 】快晴
【 ルート 】八田部橋駐車地 6:56 --- 上丹生コース --- 8:38 七々頭ヶ岳 9:05 --- 9:56 菅並登山口 --- 10:39駐車地
スノー衆終了後、北陸自動車道賤ヶ岳SAに居場所を移し、車中泊した。昔、初めて車中泊したのは伯耆大山のふもとの無料駐車場だった。真っ暗で無人の駐車場が気味悪くて、怖かったことを覚えている。今では家で寝るよりもずっとよく熟睡できる。人間、変わるもんである。
高速道路SAのいいところはまずトイレが綺麗だし、最近ではほとんどのSAでフードコードが24時間オープンなのである。これでメニューにお酒があれば言うことなしなんだけど、まあそれは無い物ねだりというものか。朝5時過ぎにフードコートで朝食をとり、6時に出発する。
木之本インンターでおり、登山口の上丹生に向かうが、わずか30分ほどの道のりである。駐車スペースがあるかどうか心配していたのだが、上丹生コースの登山口に当たる八田部橋の入り口が広く除雪されており、車を止めることができた。八田部橋自体は除雪されておらず、トレースもない。橋上は30センチほどの積雪なので、駐車池からスノーシューを履いて出発する。
八田部橋からは七々頭ヶ岳がすぐ近くに見えている。この感じだと、午前中には下山できるだろう。橋を渡ると昨日つけたものと思われる上丹生方面からのスノーシューのトレースがあり、ありがたく使わせてもらうことにする。100mほど歩くとトレースは稜線方面へと左折する。
トレースのおかげで楽をさせてもらえそうだ。山日和さんには軟弱な登山と言われるかもしれないが、まあ、私のような雪山初心者にはちょうどいい。稜線に上がるとコナラまたはミズナラを主体とした自然林となり、気持ちの良い雪山歩きが楽しめる。空には雲ひとつなく、風もない、絶好の山日和である。大方の人は天気が崩れると見たようだが、高気圧の後端がこの地域にかかっていて、少なくとも午前中は高気圧に支配されているので、晴天で正解なのだ。晴れ男の面目躍如である。
- 明るい稜線
稜線からはすぐ右に横山岳が見え、その西尾根の全貌が見渡せる。機会があったら積雪期に横山岳にも登っておきたいものだ。稜線が上がるにつれて周りの低山のピークが目線より低くなり、そのうち琵琶湖が見渡せるようになってきた。関東の山は富士山がアクセントになるが、この辺りの山は琵琶湖がアクセントになっているようだ。
1時間半ほどであっさりと頂上着。トレースのお蔭である。トレースがなければ重雪で体力を消耗したに違いない。頂上には観音堂があり、お参りさせていただいた。この付近は綺麗なブナ林となっている。
- 頂上
まだ昼食には早いので、雪の上に座って横山岳を眺めながら干し柿とカフェオレで一休み。全然寒くなくていい気分だ。
- ブナの大木
まだ時間も早いので、菅並集落方面に降りることにする。スノーシューの主はピストンだったらしく、こちら方面のトレースはない。と思ったら一つだけトレースがあった。最初は人間の足跡かと思ったが、人間の足跡にしては穴が小さく、どうも鹿がつけたトレースのようだ。このトレース、随分下の方から続いており、深雪で苦労しながら登ったようだ。鹿が何を考えてこんな山の上まで登ってきたものだろうか。
東向き斜面は日当たりが良く、ネコヤナギの花序がもう随分大きくふくらんでいる。すっかり早春の山の気分だ。斜面を下りるに従って雪が腐ってきて、最後の急斜面はルートを外したこともあって、重雪に苦しめられる。こっちから登らなくてよかった。きっとずっとラッセルしていたら頂上にたどり着く前にめげていたに違いない。
- ネコヤナギ
1時間もかからずに菅並集落に下りる。日の光が雪に反射して痛いくらいに降り注いている。アンダーのみになって歩いてもちっとも寒くない。菅並集落の向こう側には妙理山が見えている。今度は妙理山から七々頭ヶ岳へ周回してみたいものだ。春の気分を満喫しながら、30分ほどかけて駐車地に戻った。
- 菅並集落から見る妙理山
冬山が始まったばかりだと思ったら、すっかり春山の気分を味わった贅沢な半日だった。