【日 付】 2016年9月9日(金)
【天 候】 晴れ
【山 域】 上信越
【メンバー】 kitayama-walk(単独行)
【コース】 8:15車坂峠(登山口) 8:25車坂山 9:10槍ヶ鞘 9:20トーミの頭9:30 9:45黒斑山9:55 10:20蛇骨岳 10:35仙人岳10:45 11:10鋸岳 11:40前掛山分岐 11:55湯の平口 12:00火山館12:15 12:20湯の平口 13:05トーミの頭13:40 13:45中コース分岐 14:20車坂峠(登山口)
- GPS軌跡図
今年5月に北海道の後方羊蹄山に登って百名山も90座となり、いよいよカウントダウンの態勢に入った。あと残っている山は上信越に多い。浅間山、四阿山、皇海山、草津白根山、苗場山、巻機山などである。今回は、比較的近接している浅間山と四阿山の2座に登ることにした。浅間山は、阿蘇山と並んでわが国の代表的な火山として有名である。いつ頃から噴き始めたかは知らないが、それは今日に至るまで絶えることなく煙を上げている。浅間山は煙とともに生まれ、今も煙によって名を博している。深田久弥は、浅間山のことをこう表現している
。「日本中部の山に登る人は、それがどこの山であろうと、そこから浅間山を見逃すことはないだろう。その孤立した大きな山容と、まるで自己の標識のように煙をあげているので、すぐに見当てることができる。」(深田久弥「日本百名山」から)
浅間山は現在も活動中の火山であるため、火口のある本峰(2568m地点)までは登ることができない。規制レベル1のときは、本峰のすぐ西隣にある前掛山(2524m)まで登ることができるが、現在は規制レベル2であり、前掛山登山口である賽の河原分岐点までしか登れないようである。
<プロローグ>
登山前日、佐久平駅から車で高峰高原をめざした。小雨がぱらつく生憎の天気である。もちろん浅間山は雲に覆われて見ることができない。チェリーバークラインという道路を上っていくと、途中に浅間山登山口と大書された表示があった。これは天狗温泉(浅間山荘)に向かう分岐である。浅間山への登山ルートは、この天狗温泉からのルートと、高峰高原の車坂峠からのルートの2つである。天狗温泉は標高1410mであるが、高峰高原は標高1973mもあることから、後者のルートで登ることにした。ただし、後者の場合は「草すべり」という300mの急坂の喘登を覚悟する必要がある。
<不安な夜から歓喜の朝へ>
前夜高峰高原ホテルに泊まり、標高2000mの星降る雲上の夜景を満喫することを楽しみにしていたが、生憎の天気で夜景すら望むことができなかった。おまけに夜半には雨の音がざんざんと聞こえてくる。天気予報は明日は晴れるということだったが、不安を覚えつついつの間にか眠りについた。目が覚めると、窓の外は明るい。飛び込んできたのは雲海だ。もちろん晴れている。雲海の向こうには、はっきりと形がわかる富士山。さらに金峰山、国師ヶ岳、甲武信岳などの奥秩父の山々が並んでいる。また八ヶ岳の山々も見える。赤岳、横岳、硫黄岳、天狗岳、蓼科山。思わずうれしくなる。
- 八ヶ岳が見えます
<車坂峠~トーミの頭>
今回のコースはロングコースではないので時間的余裕もあったことから、朝食をしっかりと摂ってから出発することにした。ホテルの駐車場の隣が車坂峠で、ここが登山口である。ここからトーミの頭にかけて表コースと中コースの2つがある。表コースの方が眺望がよいというので、表コースを選択した。最初はカラマツ林の中を登っていくと10分ほどで車坂山を越え、一旦鞍部に下ってからガレ場の登りとなった。所々で振り返ると眺望が開け、富士山と奥秩父の山並みと八ヶ岳の山々が見える。さらに北アルプスの穂高連山と槍ヶ岳が見える。槍が見えると山座同定が容易である。やがて尾根に付けられて整備された登山道になると登りやすくなった。程なく巨大なドラム缶を連想させる避雷小屋にやってきた。噴火の緊急時のシェルターだ。ここからわずかに登ると、前方に初めて浅間山が姿を見せた。ここが槍ヶ鞘(赤ゾレの頭)と呼ばれるところで、外輪山の南端になっている。槍ヶ鞘から少し下ると車坂峠からの中コースと合流し、外輪山の縁に沿って登ると間もなくトーミの頭(2320m)というピークに立つ。ここからは浅間山全体を一望することができるビューポイントになっている。
- 槍ヶ鞘から浅間山を望む(左にトーミの頭)
- 北アルプスの穂高連峰と槍ヶ岳が見えます
<トーミの頭~鋸岳>
トーミの頭で小休止した後、外輪山に沿って黒斑山に向かう。すぐに草すべりの分岐点がある。帰りは湯の平からここに上がってくる予定である。分岐を過ぎると浅間山の火山活動を監視するためのテレビカメラが設置してあった。15分ほど登ると黒斑山の山頂(2404m)に着いた。ここが外輪山(第一火口壁)では最も高いところである。正面に浅間山が望め、火山灰が流れてできた縞模様も観察することができる。さらに外輪山の縁に沿って進んでいく。樹林の中になったり、笹原になったりしながら少しアップダウンをしながら進むと蛇骨岳(2366m)に到着した。ここからは進路が東に向かうことになるが、遮るものがなくなり、眺望はよくなってきたが、右手は切れ落ちた断崖になっている。程なく次のピークである仙人岳(2319m)に着いた。山頂には三等三角点があり、浅間山が間近に見えるところである。仙人岳から下っていくと、Jバンドと書かれたところにやってきた。ここから賽の河原に下っていくことになるが、その前に鋸岳(2254m)を踏んでおこうと外輪山の縁をさらに少し進んだ。何の変哲もないところに鋸岳のプレートが取りつけられていた。
- 黒斑山山頂から浅間山を望む
- 仙人岳から浅間山を望む
<Jバンド分岐~トーミの頭>
Jバンド分岐まで戻り、急なガレ場を下っていく。蛇骨岳から仙人岳に向かって歩いているときは、右側が切れ落ちているのを見てきたので、外輪山の断崖絶壁をどうやって下るのかと思っていたら、ちょうどいいくらいのバンドがあって、うまいこと下っていける。さほどの苦労をすることもなく下ることができた。下から見上げると岩壁が荒々しい。ここからは賽の河原と呼ばれる平坦地を進むが、前方に噴火によって飛んできたと思われる大きな岩が3つあった。その横を抜けて進むと左には浅間山が大きい。やがて樹林の中に入っていくと、前掛山分岐点にやってきた。ロープが張られて「これより先 立入禁止」と表示されている。今日は天気もよく、煙も出ていない。前掛山までは簡単に登れるだろう。禁を犯して登りたいという衝動に駆られたが、やはりルールは守ることにした。さらに樹林の中を進むと草すべりの分岐である湯の平口にやってきた。天狗温泉からやってくる登山道とここで合流する。少し行ったところに火山館(小屋)あるので立ち寄ってみた。ログハウス風の小屋だ。時刻もちょうど正午になったので、ここでランチタイムを取ってもよかったのだが、湯の平からの草すべりの登り返しがあるので小休止にとどめることにした。湯の平口(2013m)まで戻り、草すべりに向かった。ここからトーミの頭(2320m)までは標高差が300mある。しかも斜度がかなりある。喘登になることは覚悟していた。少し登ったところで振り返ると浅間山が美しく聳えている。さあこれからきつくなると思うと、前方には剣山のように尖った岩峰がそそり立ち、ガスに煙っている。いかにもしんどそうだ。急に足取りが重くなり、なかなか進まない。それでも後半はつづらを切っており、少しは助かる。喘ぎながら何とか外輪山の縁まで辿り着き、トーミの頭に到着した。45分かかったが、まずまずのペースだ。さあランチにしようと思ったが、ガスがかかってきて、さきほど登ってきたときには見えていた浅間山の姿もガスの中に隠れて見えない。それでも時々ガスが薄くなって浅間山が姿を現すこともあった。
- 賽の河原から浅間山を望む
- 草すべりの途中で浅間山を望む
<トーミの頭~車坂峠>
ガスが多くなってきて眺望もなくなってきたので30分ほどでランチタイムを切り上げて下山することにした。下山は中コースを下ることにした。トーミの頭から少し下ったところに分岐があることは往路で確認してある。中コース分岐からは黒斑山の西側斜面を覆うシラビソの林の中を下っていく。最初は溝のような細い道であったが、やがてツガの樹林に変わってくる。そして山腹をトラバースして下っていくと、平坦な林道となり、程なく車坂峠に到着した。下山後は、ランプの宿で有名な「高峰温泉」に入浴してみることにした。車坂峠から車で3分ほどのところにある天然温泉である。日本秘湯を守る会会員の宿でもある。入浴料も500円と安い。乳白色の温泉の泉質は硫黄泉である。熱い湯とぬるい湯の2つがあり、交互に入るといい感じである。時間帯も宿泊客が入ってくる前だったこともあり、空いていたことから1時間近くも入っていただろうか。のんびり、ゆったり温泉に浸かり次の山である四阿山の麓にあるあずまや温泉に向かった。