【日時】2011年6月12日(日)
【山域】白山
【天候】晴のち曇のち雨
【メンバー】とっちゃん、たんぽぽ
【コース】
大白川 5:20---地獄谷 6:00 --- 白水湖最上部 7:00 --- 曲り谷出合 8:40 --- 二俣(1,600m地点) 10:50
--- 最終雪渓取付き(1,900m地点)12:00 --- 13:40 南白山 14:20 --- 二俣(1,600m地点) 15:30
--- 曲り谷出合 16:50 --- 白水湖最上部 18:00 ---地獄谷 19:00--- 大白川 19:25
ふ~たん編隊飛行の2011年春山の集大成として、湯谷そして別山谷から攻める南白山を予定していた。
ところが白山公園線の開通が遅れ、延期にしていた決行日も生憎の雨模様となってしまった。
その翌日、天候回復の兆しが出てきたが、ふ~さんには予定があるので編隊飛行はできない。
ならば、一人で別山谷の偵察でもしてこようと思っていたところへとっちゃんメールが入った。
白山周辺ならどこでもいいから連れてってメールのようでもあるが、とっちゃんを侮るなかれである。
実は南白山攻めは2年ほど前から周到な準備を進めていた、もちろんとっちゃんは知るはずもない。
白山からの撮影画像で詰める雪渓を十分に検討、そして昨年のふ~たん編隊焼滑山行はその前哨戦とでもいうべきものだった。
彼女は鋭くもその匂いを敏感にかぎつけ、しかも絶妙なタイミングでメールを入れてきたのだ。
恐るべし、甲賀くのいち。
- 2年前からの周到な計画、結局は緑色ラインに決まった。
別山谷偵察という名目にしては早すぎる5時過ぎのスタートとなった。
まず最初のハードルは地獄谷の徒渉だ。
いつもなら辛うじて山靴で渉れるのだが、雨上がりということで今回は少々難しい。
裸足になって沢に入ると・・・
ギエ~ッ!!メチャ冷たいやんけ!
体温が急激に下がって頭がフラフラ、めまいがしそうだ。
とっちゃんはと言えば、ちょっと冷たいだけよとさめた顔、やはり沢オンナは水に強い!
地獄谷を渡ればすぐに湯谷に入るための試練が待ち受けている、湖岸のへつり歩きだ。
とっちゃんに尻込みする様子はない、もうすでに行け行けどんどんモードに入っているらしい。
白水湖畔をクリアすれば湯谷への入渓資格を授かり、しばらくはのんびりと河原歩きが続く。
焼滑へと続く沢を覗くと昨年より雪が少ない様子、今年は残雪豊富と思っていたのにどういうことだ。
しばらく進むと、いつもはなんとか渉っていた徒渉ポイントが水量が多くて越せない。
これから先は何度も徒渉を繰り返すので、足元を沢装束に固めることにした。
沢モードに入ると勢いづくのがとっちゃん。
天気が悪ければ山菜採りなどでお茶を濁すつもりでいたのに、どうやら彼女は本気で南白山を狙ってるようだ。
- 別山谷に入ると残雪が出てくる
狭く険しいイチロザ谷を見送るとすぐに曲り谷出合となる。
イチロザ谷とは対照的に明るく開けた曲り谷の奥には、伸びやかな白山主稜線が見渡せる。
この辺りから湯谷は別山谷と名を変えて、谷らしい雰囲気になってくる。
幾度も渡渉を繰り返している間に、とっちゃんにトラブルが発生した。
沢のど真ん中にかがみ込んでもがいているではないか、どうしたのかと思えばストックの先を沢の中の岩に食いつかれたようだ。
オトコには食いつかれなくても岩には食いつかれるらしい。
早速ぽぽんた出動、引いてもダメなら押してみろでストックはスッと抜けた、女性を口説く時と同じ要領だ。
土砂にまみれた巨大デブリ帯に入ると前方に大滝が姿を現し、思わぬ滝の出現で二人は大喜び。
タロタキ谷にかかる大滝だ、この滝が谷の名前の由来なのだろう。
滝を見上げるビューポイントでひと休みと腰を下ろせば、周囲には山菜がわんさか。
南白山でのランチに使う山菜も調達していこう。
箱谷出合からは待望の雪渓に乗ることができたので、ここで山靴&アイゼンに履き替える。
遡行してきた別山谷を振り返れば、ずっとゴーロ続きで心配していた難所もなく余裕で歩くことができた。
おかげで箱谷出合到着は10時、南白山登頂はすでに射程圏内だ、否が応にも本気モードにスイッチが入ってしまった。
ところがとっちゃんは雪の上に出ると徐々にその勢いが薄れていく。
どうしたことだろう、雪渓が心配なのか、帰路が心配なのか、ここまで来てしまったことを後悔しているようにすら見える。
やはり沢オンナは水の中に置けということか。
- タロタキ谷、大滝が上に見える
ルリビタキの囀りが響き渡る1,600m地点の二俣は広々とした気持ちのいいところだ。
近くに小滝があってテン泊するにも絶好のポイント、ゾロ谷の1,900m地点と雰囲気がよく似ている。
南白山へとのびる左俣が思いのほか狭いので、念のためにとっちゃんのGPSで確認をとってもらう。
間違いはない、どんどん進んでいこう、ぽぽんたのモチメーターはすでに振り切れている。
南白山の頂に向かっては何本もの雪渓が伸びている中で、今回選んだのは西側から2本目の雪渓だ。
この雪渓に入るにはまず1,750m地点でクランク状に曲がらなくてはいけない。
細い雪渓が複雑に入り組んでいる様子は、まるでどこかの路地裏でも歩いてるような錯覚に陥るほどだ。
そんな地形なので当然のことながら正確な地図読みが要求されてくる、間違えると後でしんどい思いをするので慎重にならざるを得ない。
目的の最終雪渓を目指すには、これより更にもう1本東の雪渓に入ることとなる。
その入口は短いながらも40度くらいの斜度があり、その上で岩場が顔を出している。
岩場まで登ったところで下を見ると、急斜面に喘ぐとっちゃんから泣きが入った。
「急すぎて帰りは下れないよ~」「ピッケル出したいよ~」
ここでピッケルを出すことは危険なので、もうひと頑張りしてもらい岩場まで登りきってもらおう。
岩場の乗越しはホールドがなくて危険だ、思わず昨年ゾロ谷での滑落が脳裏をかすめる。
まず自分が無事に通過、とっちゃんをお助けひもでピックアップできた。
ここまで難所がなく順調すぎるくらいに登ってきた、やはり1ヶ所くらいは緊張する場面があったほうが楽しいというものだ。
雪渓を登る背後には白山御前峰の雄姿が立派で、いやがおうにもペースが早まる。
しかしとっちゃんのペースは上がらない、今年は雪山に誘ってくれないとぼやいていた彼女。
今日はやっと一緒に雪山歩きができたのだからがんばろう。
最終雪渓を登りきれば別山は指呼の距離、今日の主役は白山よりも別山と言っていいだろう。
雪の消えた稜線には背の低いオオシラビソ混じりのブッシュが広がっている。
南白山は別山東尾根の中でも最たるピークなので踏み跡を期待していたが、そんな考えは甘かった。
山頂と思えそうなところでKUMOかDJFのピンクリボンを探すが見当たらない、どうやら看板もないようだ。
南白山は想像以上のヘンタイピークだったのか!
三角点を探すもなかなか見つからず焦りかけていると、クマザサの中に隠れた標高2168.7mの三角点を見つけた。
「とっちゃ~ん!あったど~っ!」二人で喜び合って写真を撮りまくる。
ワンデイで南白山がやれるなんて・・・夢のような瞬間だ。
- ここが一番キツイところ、がんばれとっちゃん!
山頂のすぐ西、見晴らしのいい雪田で手短にランチタイムとした。
荷物が多いのでストーブを持ってこなかったというとっちゃんに白山名物にんにくラーメンを振舞う。
やはりこの季節はまだ温かいものが嬉しい。
食事をしながらの山座同定、遥か南には昨年みんなで登った滝波山、すぐ足元には芦倉山、丸山、初河山。
三ノ峰から別山平、大平壁の様子は手に取るようにわかる。
北には昨年とっちゃんたちと歩いた北弥陀ヶ原の尾根が長々と横たわっている。
腹ごしらえが済めば残り時間は少ないのですぐに下山だ。
楽しい雪渓下りは一気に箱谷出合まで駆けたいところだが、とっちゃんにとって雪渓下りは大問題。
なかなか下りてこないとっちゃんに途中から下りのレクチャータイムとなる。
イチニイ、イチニイ、イチニイと一緒にヒールキックで下る。
難所の下降をパスするために小尾根を乗越して西側の雪渓を偵察、問題ないことを確認してとっちゃんにOKコールを出す。
二人でスルスル~っと隣りの雪渓に滑り込めば、後は次第に傾斜は緩くなってひと安心。
ところがとっちゃんの表情が次第におかしくなってきた、なんだかポヨヨ~ンとした顔をしてアニメのポニョのようだ。
後で聞けば脱水状態でひどく気分が悪かったらしい。
- もう一息だ、とっちゃんガンバ!ガンバ!
雪渓を下りきると曇り空から雨粒が落ちてきた、天気予報では晴れのち曇りだったのにハメられた。
沈黙の下山が延々と続いたあと、ようやく白水湖最上部まで戻ってきた。
雨の中、難儀な湖畔も無事に通過、ほぼ予定通りの19時に地獄谷まで戻り、「とっちゃん無事終了おめでとう」と声をかける。
するとずっと元気のなかった彼女から笑みがこぼれ、とても救われたような気持ちになれた。
最後は露天風呂で締めたいところだが時間が遅すぎるだろう。
だめもとでロッジの管理人さんを尋ねてみる。
管理人 「ああっ、お久しぶりです。どうぞゆっくりと温まっていって下さい。」
ぽぽんた「ありがとうございます、今日は5時スタートで南白山でした。」
管理人さんからの温かい言葉に涙がちょちょぎれる思いがした。
南白山はふ~さんと約束の山であっただけに、一緒に登頂できなかったことが残念であり申し訳ない思いでいっぱいだ。
その一方で、この春はとっちゃんに雪山のお誘いをしなかった償いができてホッとしている。
いずれにせよとっちゃんには、棚からぼた餅の南白山となったことには間違いない。
長丁場につきあってくれたとっちゃんにありがとう。