【日 付】2月13日(日)
【山 域】伊吹山
【メンバー】Uさん、Sさん、通風山
【天 候】曇り時々晴れ
【行 程】常滑6:02+名鉄+6:46金山6:55+JR+8:02近江長岡8:05=湖国バス=8:21伊吹登山口8:40――9:15一合目9:23――10:35三合目10:42――11:20六合目避難小屋11:40――13:00九合目13:05――13:15覚心堂14:00――14:05九合目――14:30六合目避難小屋15:00――15:25三合目――16:03一合目――16:40伊吹登山口17:30=湖国バス=17:44近江長岡17:55+JR+19:05金山19:19+名鉄+19:57常滑
【運 賃】名鉄 往復 1,180円
JR 青空フリー切符 2,500円
湖国バス 往復 700円
合計 4,380円
左膝の前十字靭帯損傷と半月板を痛めてから、本格的な登山が出来なくなっていたのだが、なんとか担当の医者から装具をつけてハイキング程度なら正式にOKがでた。
1月23日にまずは雪山低山の南宮山へチャレンジ、下りで痛みがでたものの行ってこれたので気をよくしていた。
そんな折、地元のおばちゃんからメールが入り、どこか行きませんか?とのこと。このおばちゃんは昨年伊吹山を敗退していて未登頂なので、「じゃあ伊吹山でも」と口が滑ってしまった。
ダブルストックにスノーシュー&ピッケルに12本爪アイゼンの二刀流で参戦だ。しかも例によって公共交通機関利用という譲れないスタンスのエコ登山。
パッキングもなんとか満足がいくほど上手に出来て、名古屋方面上り列車1両目が集合場所となった。
JR東海は土日祝の休日に青空フリーパスという普通快速列車乗り放題のフリー切符を2500円で発売している。名古屋からだと北は下呂、木曽平沢まで、東は豊橋を越えて二川、北へ飯田まで。南は鳥羽、多気、紀伊長島まで、西へは米原までとずいぶん長い距離が乗り放題となる。僕たちが利用する区間は往復で60円安くなるだけだが、おばちゃんたちに教えてあげたかったので緑の窓口に並んだ。
快速米原行きは関が原を越えるあたりから雪煙をあげながら走る。垂井の駅を通過すると南宮山のコブが見えた。やがて右手に屏風のようにそびえる伊吹山が見えてくる。だんだん気持ちが高ぶってくる。おばちゃんたちの顔もきりっとしてきた。
近江長岡の駅で降りたのは予想に反して我々3人だけ。湖国バスは列車からの乗換えを待つようにして出発する。近江長岡発伊吹登山口行きの1番便なのに貸切状態だ。「使ってやらないと廃止路線になっちゃうね。」このバスは診療所や風呂屋などを巡って登山口へと着いた。地元の年寄り用のバスだ。登山口の停留所は上野集落三ノ宮神社のすぐ下だった。以前はもっとずっと手前の上野口だったからすごく便利になったものである。
登山口からのリフトは数年前に撤去され、うらぶれた民宿街が神社を取り囲むようにたたずんでいる。わりに新しいトイレのベンチを使わせてもらって身支度を整え、登山口から歩き出すと杉の植林をざっくり削り取ったような道がジグザグに続いている。雪が凍てついて歩きにくい。スキーやスノーボードをリュックにくくりつけた若者が追い抜いていく。スキー場は廃止となったが、まだまだスキー、スノーボードのかくれた遊び場なのだろう。
35分ほどの歩きで体が充分温まったころ一合目の伊吹高原荘に飛び出す。ここは山岳会に入っていたころ毎年真冬に訓練の宿泊所となって大宴会をやっていたのが懐かしく思い出す。衣服調整をするパーティー、アイゼンを装着しているパーティーなど10人ほどがここで停滞していた。
我々はここでスノーシューを装着した。
スノーシューを履き始めたころは足を開いて歩くのに慣れず、下駄のようにザクザクと歩いて難儀していたが、最近ではスノーシューはスリッパのように引きずりながら歩く要領を会得してずいぶん楽に雪の上を歩くことができるようになった。二合目から三合目にかけて斜面が急になってくるのでかかとの金具を立ててすすむ。楽チンだが平坦なところになると一気に歩きにくくなる。
金具を立てたり倒したりする細工を考えると面白いかもしれない。なにかいい方法はないかな?
旧ホテルの下をトラーバース気味に行けば、三合目のトイレに着いた。ここでしばしの休憩。登山口からここまで2時間。ロープウェイやリフトがあればこのあたりまで楽に来れて実質的にはここらあたりからのスタートとなるのだが、スキー場が廃止になった今は、2時間ほどわっせわっせと登らなくてはいけなくなった。
はたと気づくとスキーリフトの鉄塔が全部なくなっているのに気がついた。去年は確かあったはずだが、完全にスキー業務からは撤退してしまったようだ。
- 伊吹山屏風の斜面をバックに
スノーシューで快適に六合目避難小屋まで進む。去年はずり落ちていた屋根も今年はしっかり乗っかっている。ここでアイゼンとピッケルに武器を変更。スノーシューとストックを隠すようにデポして屏風のようにそびえる山頂をめざす。先行は10人ほど。下から見あげる8合目あたりの先頭のパーティーは難儀しているようで、なかなかペースが上がっていかない。こっちといえば彼らのトレースを使わせてもらって申し訳なく、ありがたい気分だ。ひざの故障以来の本格的登山なのだから今回は許してもらおう。
九合目直前の斜面は角度を増してピッケルも根元まで入ってしまうほどだ。悪いほうの左足をかばいながら歩いていたので、良いほうの右足の太ももがピリピリ攣りだした。前を行くスノーボードを担いだ若者も苦しそうに、ほとんど四つんばいで登っていく。壁のような斜面を上がり平坦な頂上台地になったところで完全に右足が攣ってしまった。足を投げ出して座り込めばブリザードが口元に吹きつけ顔が凍りそうだ。ヤバイ!実にヤバイ足が痛いほどに攣っている。悪いほうの左足は大丈夫なのだが・・・・・。5分ぐらいしたら少し落ち着いてきたのでおばちゃんたちの後ろから、超スローぺースでなんとか覚新堂に飛び込んだ。ほっと一息だ。早速雪を溶かしてカップラーメンを作ろうと外へ出て雪を集めるが、そのまた冷たいことといったらない。帰りに素手で覚新堂の扉の金具を触ってしまい掌が一瞬引っ付いてしまった。忘れていたことをいろいろ思い出させる山行きになった。
カップラーメン用の湯を沸かしていると、となりにどこかで見た女性がいた。その人はチョコレートをくれた。そうだ、一日早いバレンタインデーだった。僕にくれた分もらえなかった人がいたのかな。まあいいや。ありがとう!ここ見てるかな?その後、おばちゃん二人からもチョコレートをもらい、珍しくモテモテの伊吹山山頂覚新堂で良い思い出になった。
腹ごしらえの後帰路に着く。九合目からは尻セードでどんどん下る。六合目避難小屋までの3/4は尻セードで下ったような気がするぐらい、ガンガン下る。
25分ほどで下ってきてしまった。おばちゃん二人組みを振り返ればびびりながら、ちょろりちょろりと尻セードをしては止まり、ときどきごろごろ転がったり、頭が下になったり、他の登山者とぶつかりそうになったり・・・「オイオイあんたら滑落してるじゃん。」小屋で30分弱待つことになってしまった。
- 尻セードは楽し!
避難小屋でスノーシューを回収してパッキングしなおして歩き出すと、平坦なふもとが見下ろせ遠くにきらきら光るのは琵琶湖だろうか、いい景色できれいだった。
- 近江平野かな?
登山口まで降りるとバスが来るまで小一時間、反省会と称して缶ビールでささやかな宴会が始まる。バス停には東屋があり、当然貸切状態だ。これがいい。1本のつもりが2本になって寒空のはずが体はポカポカ。おばちゃんパワー炸裂でガハハガハハとバスの車内で延長戦。さすがに電車の中では僕は寝てしまったが、おばちゃんはまだまだ元気に反省会だ。厳冬期の伊吹山初登頂がよほどうれしかったんだろう。「毎年恒例にしましょうか」と言うと「技術の未熟さを痛感しました」と返ってきた。おそらく尻セードのことだろう。尻セードに技術がいるんだろうか?
名鉄の駅のホームの階段を手すりにしがみつくように下る。駅の階段がひざには一番きつい。リフト、ロープウェイがなくなってしまった分、伊吹山が大きい山になったような気がする。スタート地点はマイカーもバスも変わらない。
つう