<大君ヶ畑~君ヶ畑をつなぐ 地名は似ているけど・・・・>・
【日 付】2011年5月15日(日)
【山 域】鈴鹿北部
【天 候】晴れ
【コース】常滑5:28++6:11名古屋6:45=名神高速バス=7:59名神多賀-名神多賀口8:07=湖国バス=8:30大君ヶ畑8:40—9:47鉄塔—10:27万野—10:55大見晴—11:35ミノガ峠—12:20滝谷山—15:00サンヤリ—15:55天狗堂16:05—17:20大皇器地祖神社17:30—17:35君ヶ畑バス停18:07=東近江市ちょこっとバス=18:51永源寺車庫19:22=近江バス=19:40名神八日市19:54=名神高速バス=21:41名鉄バスセンター—名古屋22:01++22:32常滑
【交通費】4060円(名古屋発着)
<内訳>
名神高速バス 名古屋~名神多賀 名神八日市~名鉄BC(1400円+1650円)
近江バス・湖国バス 名神多賀口~大君ヶ畑 300円
君ヶ畑~永源寺車庫~名神八日市 (200円+510円)
いよいよ高速道路割引廃止の季節がやってくる。この際、公共交通機関の挽回を応援したい気分である。名鉄も昨年の無配から今期は赤字転落となり、日本航空のずっこけから全日空が喜んでいると思いきや、高速割引1000円とか、スカイマークエアラインなんぞが出てきてお尻に火がついているんじゃないだろうか。ちなみに全日空の筆頭株主はわれらが名鉄なのである。あらら早くものっけから脱線してしまった。
高速が1000円であろうがなかろうが、以前から電車やバスでの計画をするのが好きで、これは元来旅が好きなんだろうなと思っている。そんなわけで、題目も「山旅」としてみた。
インターネットの情報などで行程をつなげていくわけだが、今回時刻表の隠れた部分に気が付いた。それは名神高速バスには休憩というものがある。名神高速多賀サービスエリアがその場所で、到着時刻と出発時刻が10分~15分違うのだ。時刻表は出発時刻が表示されているはずで、このことに気づいてバス会社に電話で問い合わせてみた。やはり名神多賀には10分程度前には到着予定とのこと。これで湖国バス名神多賀口8:07がつながった。
日曜早朝の名古屋中心部は静かなもので、乗っているバスも余裕で時間調整でもするかのようにゆっくり走っている。このまま順調に走ってくれれば渋滞に巻き込まれること無く多賀へ到着するだろう。このバスは大阪行きで、ほとんどがUSJに行く家族連れや若い女の子同士とかでほぼ満席である。赤い登山キャップをかぶったおじさんは異様に映っているに違いない。新名神ができてからというもの、名神のこの区間はずいぶんと交通量が減ったのか、心配していた渋滞も無く7:59に名神多賀サービスエリに到着した。
多賀サービスエリアから外へ出てのバス乗り継ぎは、初めての経験なので緊張しながら出口を探す。上下のサービスエリアをつなぐ歩道橋の真横に歩行者だけが通れる出入り口があったので、そこから出た。ほかにもあるのかもしれないが時間的に調べている余裕がない。2分ほどで一般道に出ると目の前にバス停があった。
ほどなくやってきたバスに乗る。お客は僕を含めて2名。先客は登山者。運転手と3人でおしゃべりをしながら大君ヶ畑までの道中となった。田舎のバスの良いところである。
終点の大君ヶ畑まで乗降者なし。ここで60歳ぐらいの登山者と別れる。彼は茶野~御池~T字尾根を目指すと言う。僕も最初このルートを計画していた。でも、緑水さんの「サンヤリあたりの石楠花尾根」という書き込みが気になって、クラシ北尾根からの転進となったのだ。彼と君ヶ畑での無事再開を約束して、気になる滝洞谷を見やりながら1本西の寿谷へと足を進めた。
杉の落ち葉で埋まったような谷筋の道は、いかにもヒルの巣窟のようではあったが這い上がってくる様子もなく、活発な時期はもう少し先なのかも知れない。道型はほとんどわからない中、時々現れる、埋もれて忘れ去られたような鉄塔巡視路によく使われるプラスチック製の階段を拾いながら高度を上げていく。両側の尾根が近づき谷がずいぶんと浅くなった頃、道型は左の斜面をトラバースし始めた。古いロープをつたって崩れ落ちかけた道を行くとバス停から見上げていた高圧線の鉄塔を乗せた尾根に到着した。
- 一番最初の鉄塔
明るい尾根はカレンフェルトの石灰岩を露出させ、時々登行を妨げながら点在している。万野と大見晴の分岐のピークで、長い行程をおもんばかり、さてどうしたもんかと迷ってはみたが、三角点に敬意を表して万野に寄ってみることにした。古いテープがわずかにみられるものの、踏み跡の薄いなだらかなピーク群は地図読みの勉強によい場所だ。万野につけばこれまた忘れ去られたかのような古いプレートが2枚のみ。なかなか趣があってよい。
休憩するでもなく大見晴へと折り返す。これまた地形と地図とにらめっこしながら歩く。
「大見晴」という地名については以前、洞吹さんと温泉玉子さんとのやり取りがあった。そのなかでは「近江見晴らし」とかいう説もあって、期待していたが今では植林が育ってしまって展望がなかった。今では気持ちのよい広場、植林地の開けた場所、上空の青空が見渡せる「おおみはれ」でいいのではないだろうか。ちなみにここにはテープ類、プレートはない。ここぐらいはそのまま何も無い場所にしておきたいような気がしてならない。
- 明るい大見晴
ルート取りにコンパスを当てる。どうみてもあたりに踏み跡のない感じだ。さあ、ここからヤブコギだ。
忠実に主尾根をたどれば踏み跡らしくもあり、また時には獣道とも思えた。ミノガ峠に近づいた頃、突然尾根が途切れた。気が付けば断崖絶壁に立っていたのだ。そこは峠に付けられた林道の切通しの20mほどの高さの位置だ。
「どうやって降りるんだぁ?」切通しの上部で右往左往するうちに、小沢を見つけた。この沢は路面まで自然のまま流れている。ここのほかには降りられそうにない。グズグスの水の流れの中、靴を汚しながらなんとか舗装道路に降り立った。落ちたら大怪我のこの行程唯一の危険箇所だったかもしれない。
またもやここで現況と地形図とにらめっこが始まった。向う尾根はわかっているのだが、切通しで登れない。ひとつピークを回り込む林道に沿っていけば、壁の高さも2mほどになってここしかない!とよじ登り、尾根芯に上がることができた。
さあ、ここから第2ラウンドが始まる。1/10000の地形図3枚となった全行程の1枚が終わった。
尾根にあがってみれば意外や意外。踏み跡がしっかり付いている。拍子抜けである。左は植林、おそらく作業道でよく使われているんだろう。尾根芯には草も生えていない道が先へと続いていた。
しかしそれもほんのつかの間、滝谷山への登りが始まる頃、踏み跡が消滅した。地主は林業に関係のない登山道は要らないのだろう。背丈を超える細い樹木のやぶと茨のトゲが行く手を阻む。時々現れ始めた赤や紫のテープだが、そこをたどってみるもとてもルートとは思えない、どこを上がっても同じだ。引っかき傷を作りながら平泳ぎのごとく掻き分けてあがれば三角点が迎えてくれた。
滝谷山での御池方面の展望は素晴らしく、茶野、鈴、鈴北、御池丸山、ボタンブチ、伊勢尾、鎮座する山塊に感動した。また違う方向からの御池もすばらしいものだ。
ここでお昼ご飯にすることにした。今日は珍しくパンにした。行程に余裕がないのが大きな理由。ヒザもシクシクしだしたが毎回のことでこれ以上悪化しないように、慎重に歩こう。
このあと一回コースアウトしてしまうがなんとかトラバースして復帰した。地形図上の高圧線を横切るのを気にしすぎて、ひとつ手前の鉄塔の切り開きで、ここだと思い込んで東の支尾根に入ってしまったのだ。気が付けば見晴らしのよい尾根の上で前方左右が谷。西を見れば南へと尾根が続いていた。どうも鉄塔の広場に吸い込まれたようだ。高度を維持しながらトラバースにかかれば獣道があり、これを利用して復帰した。
本当の高圧線を横切るところも鉄塔の基部を通る。広場をかすめるようにルートは曲がっている。ここは広場に吸い込まれずにルートクリアできた。先ほどの失敗が良い薬になってコンパスにも世話になった。このあと幾度と無く立ち止まってはピークや方向の確認をする。天気がよいからこの作業も楽しいのであるが、ただここまでで余裕の出来ていた時間がちょっぴり心配になってくる。公共交通機関のネックは時間の制約だ。もちろんいざとなった時のタクシー代は持ち合わせては来ているのではあるが・・・。
アップダウンの続く尾根を行くに、いったい累積標高はどのくらいだろうと思えてきた。ピークをかぞえながら行くも、地形図には明示できないピークもあって、途中でやめてしまった。どうせ水場も無いだろうと2L持ってきたポカリスエットも半分ほど消費してしまった。途中尾根直下にチョボチョボと水場が2箇所は確認できたが、汲むまでもなかった。
もう疲れてきてしまった。といってエスケープできようも無い。そうだ、アミノバイタルがあったぞ。コムレケアもあるはずだ。左ひざをかばっていたので右足に負担がかかって、つる前の嫌な感じもしてきた。P832のとがった顕著なピークに感心しながらポパイのホウレンソウのつもりで服用すれば、気分も一身また再スタートが切れるのだ。
がんばって歩を進めればぐいぐいと高度を稼いで、三角点の石柱のお出ましである。やっとサンヤリまでたどり着いた。前週の宮指路さんのレポを思い出せば、なるほど展望はあんまりないね。わずかの休憩で出発しようとするとガサゴソと僕より少し若いぐらいの年齢の男性が南から上がってきた。
「フウ、ここがサンヤリかぁ!」
挨拶もそこそこに入れ替わるように出発した。今日唯一の出会った登山者だった。
時計を見る。奥村さんの絵地図をリュックの中から取り出した。時間を照らし合わせる。
「よっしゃ~~もらった~~~!」疲れが一気に吹っ飛んできた。
やがて石楠花の群落が満開のピンクの花で迎えてくれた。尾根芯は石楠花のジャングル、トンネルだ。
花を愛でる、余裕が出てくると相乗効果となって気持ちも穏やかになってくるから不思議なもんだ。
- 石楠花の尾根
こうなってくると天狗堂の登りも快調に歩き出せるから面白い。出てきた岩場もヒョイヒョイとあがって、天狗堂の頂上の岩の上で仰向けになってひっくり返って寝そべった。目の前には御池の航空母艦が横たわっている。御池はでかくて、いつまでたっても見える形が変わらなかったが、さすがにここまで来るとT字尾根の形がよくわかるようになる。大休止してもバスには充分間に合うし、もう少しのんびりしてもよかったかな。
- 天狗堂頂上の岩をかすめて御池山隗
天狗堂の下りで分岐が出てきた。左に行けば宮指路さんの使った下山路で早いらしいがひざのことがあるので、安全策で右へとルートを取る。それでもかなりの急勾配で踏ん張りながら降りる。尾根通しで来ていたので、今まで感じたことの無い急降下である。こりゃ登りは大変な急登だわ。
やがてブナが増えてきた。これがまた太いのだ。1~2本抱えてみたが手が繋がらないので2m以上のものばかりだろう。さらにでかいのは無いかいなぁと見渡すが特段でかいものは見つけられずじまいだった。じっくり探せばハリマオ氏が喜びそうなものがあるのかもしれない。そんな山域だ。
どどっと下ってひとつの顕著なピークを超えれば、大皇器地祖神社に降り立った。まずは無事下山感謝のお参りをして、手洗い横の蛇口を使わせてもらい顔を洗う。
「きもちええ~~」
バス停は神社を出てから左へ5分とかからない。朝方のおじさんはまだ来ていないようだ。用水からジャージャー流れ出る水でタオルを濡らし、体を拭いて長袖のTシャツに着替える。これもバス乗車のマナーのつもり。
やがておじさんがやってきた。再会を祝し情報交換。
バスがやってくるとまたもや出発まで運転手を交えて、おしゃべりが始まった。
「東近江市がこのバスを買って運転手だけ湖国バスの社員」
「私がここで登山者を乗せるのは初めてだ。」
「君ヶ畑の住人もあんまり利用しなくなった。」
「今度の改正で廃止路線になるかもしれない」
など、ぺちゃくちゃとバスが発車してからも話題が尽きない。運転手はマイクロホン越しに話すから大きい音になってそれも愉快である。
八日市までの直通ではないので、永源寺車庫で乗り替えたのだが、今度はその路線の運転手とも話が弾み、20分近く出発前のバスの中であれやこれやと今日のルートや、ローカルバスの現状問題とか、永源寺の紅葉とか3人でおしゃべり。
僕自身こんなに話すのは珍しいと思うのだが、マイカー登山では出来ない下山後のビールのせいだったのかもしれない。
名神八日市のバス停はローカルバスと高速バスのバス停が背中合わせで、高速の内と外に設計してあり、それぞれへ10歩ぐらいで到達できる。
高速バスの心配は途中のバス停で乗車する場合、定員いっぱいの満員の場合乗車できないらしい。次の便を待つことになるわけだが、僕の乗車予定の便は最終便だ。事前に君ヶ畑で携帯電話のIモードで見てみたら残席数が3席だった。このままだれも途中のバス停で乗車しなければOKなのだが・・・・。
ドキドキして待つとやがて名古屋行きのバスがやってきて、ドアが開いた。ホッ!
ウトウトしながら今日の余韻を楽しんで家路に付く。さあ、つぎはどこへ旅しようか。御池縦走なら三岐鉄道西藤原を目指してもいいかもしれないなと、思いをめぐらせていると、名古屋のネオンが近づいてきた。
- ルート図 GPSへぼいです。
つう